6月28日から29日にかけ、2019 G20大阪サミットが開催されました。近年、G20やG7と呼ばれる首脳会議では、市民、女性、経済界、労働組合等が自分たちの提言を首脳会議の議論に反映させるために活動するようになっていて、これらはG20やG7の公式プロセスの一環として位置づけられています。市民社会やNGOの声を届けるのがC20。2019年のC20サミットは、4月21日から23日の3日間、東京で開催され、海外40カ国からの368名を含め、800名を超える参加者が集まりました。
C20サミットに先立ち、日本と世界のNGOが作成した政策提言書をG20議長である安倍首相に手渡しました。2019年のC20政策提言書は、反腐敗、ジェンダー、環境、投資、国際保健、デジタル経済等、11の分野で構成されています。ジェンダー分野の提言の骨子は以下の5項目です。
(1)女性の労働参加
「労働力参加率における男女間の格差を2025年までに25%縮小する」というG20の目標を達成するための国家実施計画を策定・実行する。その際には、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、賃金の男女平等、ワークライフバランスの実現が重要。
(2)無償のケアワークの平等な分担
無償のケアワークを「認識・評価・再分配」し、家事、育児、介護に代表される無償のケアワークを男女で平等に担う。
(3)ジェンダーに基づく暴力
「仕事の世界における暴力とハラスメント撤廃に関するILO条約」の批准等、国際基準に沿った取り組みを加速する。「性と生殖に関する健康と権利」の保障。腐敗・汚職という観点に立ったセクストーション(性的脅迫)の理解。
(4)女性と性的マイノリティの意思決定への参加ならびに複合差別の視点
女性と性的マイノリティ(LGBTQI)の意思決定への参加は、公正で質の高い持続可能な成長に不可欠。また、障害、民族等、ジェンダーと他の様々なアイデンティティが交差する複合差別への視点が重要。
(5) 固定観念・ステレオタイプ(性別役割分担/ジェンダー意識)の解消
国連の女性差別撤廃委員会は、近年、「女性にとって有害な規範や固定観念の撤廃」を強調するようになっている。教育、メディア等における意識の変化が不可欠。
今回のC20では「フェミニストで行こう」「会議の場に来られない人の声を聞き、その人たちへの説明責任を果たそう」「公正で豊かで持続可能な未来へのパッション(情熱)を発信しよう」の3点を大切にしました。フェミニストは、性に基づくあらゆる差別や不平等にノーを言う人。なので、二分化されたジェンダーの枠におさまらない性的マイノリティの人たちの課題も含まれます。
少子高齢化を始め、日本にはジェンダー課題が山積していますが、なかなか変化が起きません。フェミニストの視点は、SDGsが謳う「誰ひとり取り残さない」の最初の第一歩でもあります。ジェンダー視点には社会を変える力があります。
『2019G20サミット市民社会プラットフォーム』
*C20政策提言書については以下のサイトをご覧ください
http://www.civil-20.jp
三輪 敦子((一財)アジア・太平洋人権情報センター所長、
2019 G20サミット市民社会プラットフォーム共同代表、2019C20共同議長 )
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