今年もイースターがやってきます。「イースター」は「復活祭」と呼ばれ、教会暦の中で最も重要な日となっています。イエスさまが金曜日に十字架につけられ、死んで、三日目の日曜日に死に勝ってよみがえったからです。それがクリスチャンの信仰の基本です。
今から20年以上前の90年代、私は短期大学の教員をしていました。少人数制の学校でしたが、それでも多くの在日コリアンの学生がいました。ほとんどが本名ではなく、通名(日本名)を名乗っていました。日本の植民地政策の結果、戦後もやむなく日本に居住せざるを得なかったコリアンが当時60万人以上いました。1940年の「創氏改名」の名残が継続している中、「朝鮮人」と蔑視・差別されるのが辛いため、自分を隠し、いつばれるかビクビクしながら日本人のふりをして生きているのです。日本社会には、ヘイト・スピーチにもみられるように、いまだ在日コリアンに対する根強い差別・偏見が継続しています。在日コリアンの中には、日本名を名乗ることによって、日本人を装い、そうすることによって差別を避けようとする人たちもいます。
私は「本名」で教員を務めていました。そういう状況の下、秘かに自分は在日コリアンだとあかしにくる学生が何人も出てきました。「先生の存在があるから私たちは安心して小さくならないでいられる」という言葉に胸を突かれました。彼女らを私の研究室へ招き入れ、渡来史を語り、現状を話しあいました。その結果、1年生から2年生に上がる時を期して、半分以上の学生が本名を名乗るようになりました。はじめは本名を名乗ることを怖れていました。本名になったら、友だちが離れていくのではないか、差別・偏見がもっときつくなるのではないか等です。しかし、彼女たちが、本名を名乗った途端、自分のアイデンティティを取り戻し、生まれ変わったように生き生きと生きるようになるのです。そういう場面に私は何度も遭遇させていただきました。私は、これこそ「復活」の出来事(事件)だということを痛感しました。
復活の主に出会い、打ち震える喜びを味わうのは、クリスチャン、ノンクリスチャンを問いません。死に勝って命がよみがえるというのがイースターのメッセージです。「復活祭」は死んだ者が生き返るという確信をもって未来を見つめるお祭りなのです。
呉 寿恵(オー・スヘ)(在日大韓基督教会元教育主事) |