6月15日に与党が参議院で採決を強行して成立した「共謀罪」の趣旨を含む組改正織犯罪処罰法。街頭では法律の制定過程に問題はあるがテロを防ぐためにやむを得ない、という声が聞かれた。国会の審議でも解消されないままだった数々の疑問点を、今一度整理しておきたい。
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Q1 国際条約を結ぶために必要なの?
日本はテロ対策主要国際条約13本をすべて結び、国内法整備も終えている。安倍首相が東京オリンピックのテロ対策に不可欠だとしている「国際組織犯罪防止条約」(TOC条約)。この条約の目的はテロ防止ではなくマフィアなどの国際的経済犯罪を対象とするもので、テロには関係ない。国連の公式立法ガイド執筆者もそれを明言している。
Q2 テロ対策に必要なの?
政府は過去3回廃案となった共謀罪の名称を「テロ等準備罪」に改め、国会審議でも安倍首相は「万が一にも(東京オリンピックで)テロが起きれば悔やんでも悔やみきれない」とテロ対策を繰り返した。しかし、テロ対策は現行法でも十分可能だ。特に東京オリンピック決定後に改正したテロ資金提供処罰法で、組織的なテロの準備行為は処罰対象なので、新たに必要な法律はない。「共謀罪」における277の対象犯罪は多岐にわたり、中には山でのキノコの違法採取や無許可でのごみ収集業も含まれる。これらを取り締まることとテロの防止が繋がるのか、政府の答弁はあいまいなままだった。
Q3 一般市民は対象外?
政府は処罰対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と規定。一般市民は捜査の対象外だと説明してきた。本当にそうだろうか。共謀罪の対象犯罪は277にも及ぶ。岐阜県警は風力発電の建設に反対する住民の個人情報を中部電力の子会社に渡していた。風力発電に関する勉強会を開いただけで、平穏に暮らしている市民を警察は「過激派」よばわりし、交友関係や学歴、病歴まで事業者に提供している。共謀罪の対象となる「組織的犯罪集団」にあたるかどうかは警察が判断する。原発やアメリカ軍基地の建設に反対したり、デモに参加するだけで警察は組織的犯罪集団とみなし、共謀罪を適用する恐れがある。この先「こんなことしたら警察に目をつけられて共謀罪にひっかからないかな?」といちいち躊躇してしまう、息詰まるような社会がやってくる。
Q4 犯罪の準備行為って何?
条文では「準備行為」は「資金や物品の手配」や「下見」とされてたが、通常の行動と「準備行為」を区別する基準もはっきりしない。衆議院法務委員会では桜並木の下を歩くのは花見か下見か、議論された。金田法務大臣は「花見ならビールと弁当、下見なら地図と双眼鏡を持って行く」ととんでもない答弁をした。結局、内心や思想を捜査しなければ準備行為は確定出来ない。これは憲法で保障されている「内心の自由」に明らかに反する。
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世間から、反対や疑問の声が多くあがる法律は、適用が難しくなると言われている。引き続き今後の動向を注視し、おかしいことはおかしいと、声をあげ続けることが重要であると考える。
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