日本語教育の現場において、ここ数年間でベトナムは急激に身近な国になった。大阪YWCA専門学校日本語学科でもベトナム出身者が第1位となった。
しかしベトナムについてはまだ知られていないことが多く、ベトナム人学習者と接していても戸惑うことが多いのが現状だ。そこで、ベトナム留学の経験があり、現在、修成建設専門学校・留学生担当として活躍中の五十嵐世騰(せいとう)さんを講師に迎え、お話を伺った。
ベトナム語って?
まずはベトナム語の基本から。ベトナム語の声調は6種あるが南部では5種で、第4声調と第5声調の区別がないらしい。ベトナム人の名前は姓+中間名+名からなる。姓では、グエン、チャン、ホアンなど6種類の姓が代表的で全体の7割を占める。グエンさんとはよく聞く名前だ。漢字の「阮」にあたる。ベトナム語の9割は中国語漢字にあてることができるそうだ。ちなみに結婚後は夫婦別姓とのこと。
次に文法について。主語+動詞+目的語の語順は英語と同じ。形容詞文では、英語のBe動詞に相当するものがないらしい。ベトナム語が複雑なのは、もともとの文型や文体は中国語から、音はフランス語からきているからだとか。融合の言語と呼ばれるわけだ。
日本語を学ぶ人たち
続いてベトナムにおける日本語学習者の状況についてのお話。日本語を学ぶ人は約46000人。これは世界で8番目に多い数字らしい。日本語学習機関は、大学で39校、中・高校は29校。日本語教育は盛んで、一部の小学校でも日本語が選択科目として導入された。中学校4年間で日本語能力試験3級レベルに達することもある。さらに高校で3年間、大学で4年間(日本語専攻)学ぶ人もいる。大学卒業時点で日本語能力試験2級レベルになると、ベトナムで日系企業に就職できる。2級合格者は500〜700米ドルの収入があり、一般の大卒者給与の2倍だという。また、日本語能力があると男女差別なく働くことができる。一般に女性のほうが男性よりしっかりしており、日本語ができる女性は求められる人材らしい。出産後、仕事に復帰することも社会的な常識となっている。転職についても、条件のいいところに転職し、その都度給料がアップ。昼間仕事、夜はブラッシュアップのために日本語を学ぶ人も多い。
ベトナム人はどんな人?
ベトナム人の気質については、プライドが高く、人前でミスを指摘すると次の日から口を聞いてくれなくなったという経験もあったと五十嵐さん。頑固なのに、「何とかなる」という楽観的な考えの人も多い。「(何ともならないのに!)何とかなる」と考えるベトナム人学生には根気強く説得し続けるしかないのでは、打てば少しずつでも響いてくるはず、とのアドバイスをもらった。
(文責 編集部)
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