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大阪YWCA機関紙(2015年12月・2016年1月号) アーカイブ一覧へ
大阪YWCAでは機関紙を年8回発行しています。
抜粋して内容をご紹介します。
今後を決めるのは私たち 戦後70年に思う
クリスマスメッセージ 命が祝福される日
講演会「今を生きるコツ」
YWの窓 戦後70年に寄せて
服巻(はらまき)智子さん講演会 サボテンとバラ

今後を決めるのは私たち 戦後70年に思う

 私たちは、後世の人たちから、戦後70年というあの年に何をしていたのか、と問われることでしょう。それほど大きな変貌を遂げた1年でした。

変貌の1年

  第一に、安全保障法と言われる一連の法律で、米国という同盟国に協力して自衛隊がいつでもどこへでも出動できるようになり、同盟国が交戦中なら駆けつけて戦闘に加わり、殺し殺される関係に入るようになりました。経済的安定を第一位に求める国民に応えて政府が打ち出したのは、軍需産業による景気回復です。4月1日の閣議決定で武器輸出が解禁になると、翌2日には防衛省と経産省が重機生産会社に、武器製造を柱に据えるように奨励し、首相は歴訪する各国に武器を売ったり、武器の共同開発を持ちかけたりしました。本当に軍事大国になるのです。沖縄では住民の意思を無視して代執行を行おうとし、原発再稼働も始まってしまいました。しかも、これらは、すべて米国のナイ、アーミテージ両氏などの描くシナリオそのままなのです。

反対運動の変貌

 しかし、このような政府の動きに対する反対運動も大きく変わりました。これまで、別個に反対運動をしてきた大きなグループが、沖縄に倣い、安保法制反対の一点で一致して「総がかり運動」(*注)を展開し、国会前を中心に大規模な集会や座り込みを行いました。特に9月14日から5日間は連続して数万人の参加者が道路を埋め尽くし息苦しいほどでした。参加者は個人参加が圧倒的に多く、自分の気持ちで、自分で決めて来たのです。なかでも、自分たちの将来がかかっているからと、初めて国会前に来た若者が大勢いました。シールズはその中でも有名ですが、彼らは、自分の考えをしっかり持ち、「自分で孤独に決める」と語るのは頼もしい限りでした。小さな子供を連れた若いママさんも日ごとに大きなグループになりました。

私たちの生き方が今後を決める

 今後は、「総がかり運動」がこれらすべてのグループと協働し、戦争法廃止の2000万人署名を展開したり、法廷闘争に持ち込むなど、あらゆる方法で安保法制を廃案に追いこむ計画です。
今年が70年続いた戦争のない最後の年になるのか、来年以後も戦後71年、72年と続いていくのか、決めるのは私たちの今からの生き方です。

*「戦争させない・9条壊すな!総がかり運動」のこと。       

鈴木 伶子(日本YWCA総幹事、日本YWCA理事長、日本キリスト教協議会議長を歴任。現在「平和を実現するキリスト者平和ネット」に加わり、平和運動を推進している。東京YWCA会員。)

クリスマスメッセージ 命が祝福される日

 冬至は1年のうち、太陽が最も南に寄る日で、北半球では夜が一番長く、昼が一番短い日です。イエス・キリストの誕生を祝うクリスマスは、夜が最も長く、暗い日々の中訪れます。人々が光を強く求めている時に、イエス・キリストの誕生を祝うための日が定められたのです。イエスが人間にとっての「光」であるとのメッセージが込められています。
  イエス・キリストの誕生の物語を、皆さん聞かれたことがあるでしょうか。未婚のまま子どもを宿したマリア。これは当時、許され難き事態でした。かのじょは生涯に亘って人々から冷たい視線を受けることになるのです。マリアの夫ヨセフは、イエスと血のつながりはありません。しかし、イエスの父となることを決意したのです。人々はこの夫妻のことを拒否し、受け入れようとしませんでした。 
 この夫妻の子どもであるイエスは、誕生の時から人々の暗闇の心によって拒絶され、「おまえには生きる場所、存在する場所はない。おまえの誕生など喜ぶものか」と宣告され、締め出されました。「マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである」と聖書のルカによる福音書2章6〜7節には記されています。か弱い小さな命であるイエスを、家に迎え入れようとする者はいませんでした。人々はイエスを家の外に捨てたのです。
 常識の枠にはまらない命の誕生を、私たちもなかなか受け入れられません。常識に固執し不幸や悲惨さの中で誕生した命をどこかで否定してはいないでしょうか。戦場とされた地で、基地を押し付けられている地で、女性への差別が日常化している地で、今なお悲しい事件によって生まれた命があります。出生のあり方で命の価値がはかられてはなりません。人々が見捨てたイエス・キリストこそ、全ての人を照らす光だと聖書は伝えています。
 クリスマスは神さまがイエス・キリストの誕生を通して、世界にある全ての命を祝福しておられることを受け止める日です。全ての命の価値が回復され、祝福されるために祈る日でありましょう。

山田 真理(日本キリスト教団扇町教会牧師)

講演会「今を生きるコツ」

―人生の終末に向けて、今からをよりよく生きるために―

講師:沼野尚美さん(宝塚市立病院緩和ケア病棟 チャプレン・カウンセラー)
日時:2015年10月31日(土)
会場:大阪YWCAシャロン千里

 終末期のがん患者の心のケアに長く関わってこられたご体験から、人生の終末に向けて今をどう生きるか、大切な心得を語って下さいました。
 その中から、介護する側・される側双方のための生き方のコツ5つをお伝えします。

前向きに生きる

 困難の中での希望は想像力によって得られる。若くして末期ガンになった看護学生は、「万一奇跡が起こったらスーパーナースになる。追い込まれて見えたものがあるから」と語っていた。また、困難を乗り越えた経験が人を前向きにする。阪神・淡路大震災の直後、人々が現実に向き合う中で絶望し始めた時、「あの戦争を乗り越えてきたのだから大丈夫」との高齢者の一声で皆が前向きになれた。信仰もまた確信を与える。「死ぬことは怖くないが、死ぬまでの間自分が自分でなくなることが怖い」という人に、聖書には「神はあなたがたを耐えられないような試練に逢わせることはなさらず、試練と共にそれに耐えられるように逃れる道も備えてくださいます」とあると伝えると安心される。

ユーモアをもって生きる

  ユーモアには、物事を違った角度から見る力、表現力、想像力の3つがいる。初出産に立ち会った女性が40代で亡くなった。その四十九日に彼女から転居通知が届いた。転居先は天国。「ゆっくり来てください。案内場所を見つけておきます」とあった。

感謝して生きる

 何事も「私に丁度いい」と受け止める女性、「こうだったらよかった」という言葉を聞いたことがなかった。丁度いいと思うから感謝ができる。

趣味をもって生きる

  余命2〜3カ月、特有のけだるさのあるこの時期は、ベッドサイドでできる趣味があるとよい。俳句、将棋、囲碁、折り紙など。将棋はパソコンソフトが負けてもくれる。

家族の絆を育てて生きる

 余命1カ月、人は命の危機を体で感じる。「娘に会いたい」という言葉を伝えた娘さんは最後まで来なかった。「父のことは尊敬していたが、自分が苦しかった時送ったメールに1度も返事がなかった」という。何をおいても会いたいとさせるものは、自分が愛されたという記憶である。絆は育てておかないと生きない。「ごめんね」という言葉も、残された家族のその後に関わる大事な言葉だ。自分の気持ちを家族に言える間に伝えてほしい。

 * *

 2時間、休憩なしのお話は、わかりやすく笑いあり涙あり。もっとお聞きしたい気持ちがご著書に並ぶ参加者に表れていました。  

(文責 編集部)

YWの窓 戦後70年に寄せて

 亡き夫は結婚前、シベリアに3年間抑留されていました。夫は満州の国境の部隊におり、ソ連が満州に侵攻した時に捕虜となり武装解除、貨車に乗せられて日本とは反対の方角へ連れていかれました。ドイツの捕虜と一緒になるよう西カザフスタンのアルマーター収容所での捕虜生活。食事は薄いスープにパン一切れで、重労働の中、体の弱い人は亡くなったそうです。夫は学生時代に柔道で鍛えていたので持ちこたえられたのです。鋳物工場では、寒い夜中に突然起こされて働かされたこともあったと話していました。
 その頃世界は東西冷戦中で、共産主義の教育を受けさせられて、同調しないものは帰還できないと脅され、思想を受け入れたふりをしたそうです。帰還の話が始まる頃、敗戦国の日本に帰っても今より悪い生活になるので、残るように説得されました。夫は帰りたい一心で帰国を希望し、やっと連絡船に乗り込んですぐ、嘘ばかり聞かされていたことが分かつたのです。嘘を信じて残った人たちが見送りに来ていたので、船が岸壁をはなれた時に「騙されるなよ!」と叫んだと言っていました。
 人生で一番大切な青春時代を奪われた無念を想い切なくなります。それでも帰れた者はまだ良いのですが、帰れずに命を失った人たちのことを思うと、痛恨の極みです。

(会員 葛良(かつら) 清子)

服巻(はらまき)智子さん講演会 サボテンとバラ

〜発達障がいをもつ人、そばに居る人、それぞれの生きづらさを理解する〜

 5回連続のソーシャルワークセミナー「発達障がいをもつ人とともに」の開講(1/21)に先立ち、11月6日、自閉症スペクトラム障がい(自閉症、アスペルガー症候群等)理解と支援のスペシャリストである服巻(はらまき)智子さんを迎え、講演会を催した。

 「サボテンとバラ」は、アスペルガー症候群をもつ人とその配偶者の関係の象徴である。サボテンとバラは、それぞれ世話の仕方が違う。それぞれが育つために求めるものが違う。あまりのすれ違いに一緒に暮らすことができないのか、求めるものが違っても共存しようとするのか。これからをどう生きるのか。
 お互いに惹かれ合って一緒に暮らし始めるが、コミュニケーションがうまくゆかないために、定型発達の配偶者に身体的・精神的不具合がおきることがある。「カサンドラ症候群」といわれる現象である。アスペルガー症候群は人づきあいの障がいである。社会性発達のために、安心できる状況をつくることが大事である。その配偶者は、幸福を求めて折り合いはつけられるのかと考えてみるのは重要だろう。一緒に育ち合うという観点は大切だ。
 バラの生き方、サボテンの生き方、お互いを尊重し、お互いの距離感を見きわめたい。自分セラピーのために、プロの力や自助グループのピアの力を借りるとよい。人生の新しい章は、自分を大切にして選択していくことで始まる。Let Go(失いたくないけどあきらめる、自分が手放す)もあるし、留まることもある。

(文責 編集部)
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