私たちは、後世の人たちから、戦後70年というあの年に何をしていたのか、と問われることでしょう。それほど大きな変貌を遂げた1年でした。
変貌の1年
第一に、安全保障法と言われる一連の法律で、米国という同盟国に協力して自衛隊がいつでもどこへでも出動できるようになり、同盟国が交戦中なら駆けつけて戦闘に加わり、殺し殺される関係に入るようになりました。経済的安定を第一位に求める国民に応えて政府が打ち出したのは、軍需産業による景気回復です。4月1日の閣議決定で武器輸出が解禁になると、翌2日には防衛省と経産省が重機生産会社に、武器製造を柱に据えるように奨励し、首相は歴訪する各国に武器を売ったり、武器の共同開発を持ちかけたりしました。本当に軍事大国になるのです。沖縄では住民の意思を無視して代執行を行おうとし、原発再稼働も始まってしまいました。しかも、これらは、すべて米国のナイ、アーミテージ両氏などの描くシナリオそのままなのです。
反対運動の変貌
しかし、このような政府の動きに対する反対運動も大きく変わりました。これまで、別個に反対運動をしてきた大きなグループが、沖縄に倣い、安保法制反対の一点で一致して「総がかり運動」(*注)を展開し、国会前を中心に大規模な集会や座り込みを行いました。特に9月14日から5日間は連続して数万人の参加者が道路を埋め尽くし息苦しいほどでした。参加者は個人参加が圧倒的に多く、自分の気持ちで、自分で決めて来たのです。なかでも、自分たちの将来がかかっているからと、初めて国会前に来た若者が大勢いました。シールズはその中でも有名ですが、彼らは、自分の考えをしっかり持ち、「自分で孤独に決める」と語るのは頼もしい限りでした。小さな子供を連れた若いママさんも日ごとに大きなグループになりました。
私たちの生き方が今後を決める
今後は、「総がかり運動」がこれらすべてのグループと協働し、戦争法廃止の2000万人署名を展開したり、法廷闘争に持ち込むなど、あらゆる方法で安保法制を廃案に追いこむ計画です。
今年が70年続いた戦争のない最後の年になるのか、来年以後も戦後71年、72年と続いていくのか、決めるのは私たちの今からの生き方です。
*「戦争させない・9条壊すな!総がかり運動」のこと。
鈴木 伶子(日本YWCA総幹事、日本YWCA理事長、日本キリスト教協議会議長を歴任。現在「平和を実現するキリスト者平和ネット」に加わり、平和運動を推進している。東京YWCA会員。)
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