安保法制反対!の夏が終った。安倍政権の強引な手法は、民主主義について国民の意識を高めるという皮肉な効果ももたらした。「立憲主義」という言葉がかなり浸透し、「もう一つの民主制」=カウンターデモクラシーについても理解が進んだ。選挙だけでなく、国民投票やデモなどを通じて政治を監視したり批判したりして、民意を反映させるシステムのことだ。
「選挙で選んでしまったら後はお任せ」のお任せ民主主義ではなく、しっかり監視して声を上げようと、幅広い世代を鼓舞してくれたのは、若者たち・学生たちだった。SEALDs関西の寺田ともかさんに今回の動きを振り返ってもらうとともに、大阪YWCA会員の報告をお届けする。
夏は終わったが、声を上げることに終わりはない。
声を上げることをやめない
13年12月特定秘密保護法の強行採決に始まり、集団的自衛権行使に関する解釈改憲、武器輸出三原則の見直し、安全保障関連法案・・・。最近の政府の動きを見て、この国の向かう方向に危機感を覚えた私たちは、今年の5月3日、「自由と民主主義のための関西圏の学生緊急行動(略してSEALDsKANSAI=シールズ関西)」を立ち上げた。法案の問題点をまとめたリーフレットを配布したり、勉強会を行ったり、デモや街宣を続けてきたが、9月19日の真夜中、安保法案は、国会で可決された。それをある意味敗北だ、と捉える人もいるが、私はそうは思わない。上手く言えないが、正義は、それ自体がすでに勝利なのではないか、と思っている。議席数で真理をねじまげることはできないし、解釈で人類普遍の原理を変えることはできない。ものすごく憤っていたが、暗闇の先に、私たちは確かな希望を見ていた。「夜明け前が一番暗いのだ」と誰かが言っていた。この国の民主主義は、まだ始まったばかりなのだ、と思った。私はこの国の憲法に描かれた理想を捨てることができない。私たちは一人では生きていけない弱さをもった存在として、争いではなく共に生きる道を探していく。
これまで、草の根の運動をずっと続けてこられた方々や、つらい戦争の体験を何度も語ってきてくれた人たちがいたから、私は今、「平和」が向こうからやってくるようなものではなく、それを壊そうとするものとの戦いの中で、非暴力で守り抜いていくものなのだということを知った。平和をつくり出す人たちは、ただ安全な部屋の中で平和を祈っていた私に、「あなたからはじめなさい」と示してくれた。奇跡が起こるのをじっと待つことが信仰だと思っていた私に、「信じた通りになると確信して行動しなさい」と諭してくれた。そのような人生の先輩方に、この場を借りてお礼が言いたい。この機関紙を読んでおられる方々に、心から尊敬と感謝の意を伝えたい。わたしも、これから生まれくる命のために、声を上げることをやめません。
(寺田 ともか)
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