大阪YWCAは、女性のエンパワメント、子育て支援、またNGO/NPOリーダーの育成、国際交流等の社会貢献活動をしています。

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大阪YWCA機関紙(2015年7月号) アーカイブ一覧へ
大阪YWCAでは機関紙を年8回発行しています。
抜粋して内容をご紹介します。
未来の主権者を育てる 八重山教科書採択問題から何を学ぶのか
東南アジア日本語事情 パートT 大阪とホーチミン市のあつい関係
全国の仲間と知恵を集めて 加盟YWCA中央委員会報告
YWの窓 戦後70年に寄せて
社会福祉法人大阪YWCA 新たな事業と新園長たち

未来の主権者を育てる 八重山教科書採択問題から何を学ぶのか

教書採択への政治勢力の介入

 敗戦70年をむかえる今年、中学校教科書の採択が行われる。中学校教科書は、歴史修正主義者、靖国派と言われる勢力による教科書攻撃により、「自虐的」であるとされた近現代史の事実(主に日本の侵略・加害の事実)が教科書から消される動きが続いている。
 これらの動きから生まれた「新しい歴史教科書をつくる会」系教科書は、教科書採択において特定の政治勢力の後押しにより、一部の地域で採択されている。
 2011年、沖縄県八重山地区(石垣市・与那国町・竹富町の3市町)における中学校教科書採択では、教科書を調査する学校現場での調査員が変更され、調査員の報告等採択のルールも一方的に変更された。その結果、教員の評価が低かった育鵬社版教科書(「つくる会」系)が答申され、石垣市・与那国町において採択された。竹富町は答申に従わず東京書籍を採択した。その後教科書を一本化する努力は続けられたが、文科省が竹富町を一方的に「違法」としたことで、一本化は実現することはなかった。現在は竹富町と石垣市・与那国町という2つの採択地区に分かれることで決着をみた。この「問題」は「教科書問題」が、「教科書に何を書くのか」だけでなく、同時に「教科書をどう選ぶか」という問題であることを示した。

物事の解決は権力ではなく話し合いで

 教科書問題を考える際大事なことは、教科書を使うのは子どもたちであり、教える教師であるということだ。社会科公民分野の教科書であれば、「社会のしくみ」をわかりやすく学び、主権者として育つためにどの教科書が有効かを選択しなければならない。そしてその子どもの現状を理解しているのは、保護者であり、毎日子どもと接する教師である。教師は教科書を教材の一つとして教育活動をすすめている。辞書のようにたくさんの用語があればいいわけではないし、一部の記述だけをみて教科書を選択できるわけではないのだ。そこに教師としての専門性が存在している。だからこそ、「教師の調査研究」が尊重され、教師の意見によって教科書が選択されることが重要なのだ。
 教科書採択運動の重要性は、教師だけではなく多くの市民の参加が民主主義の実践として、権力によって物事を解決するのではなく、「理性的な話し合い」によって解決するという見本をみせることだ。多くのみなさんが教科書採択に関心をもち、未来の主権者を育てるとりくみに参加してほしい。

山口 剛史(琉球大学准教授)

東南アジア日本語事情 パートT 大阪とホーチミン市のあつい関係

  4月17日、ベトナムのホーチミン市(サイゴン)において大阪YWCA専門学校(以下Y)、ホーチミン市技術師範大学(以下HCMUTE)、大阪の修成建設専門学校(以下修成)の三者による提携プログラム締結の調印式が行われ、中山羊奈校長、佐伯玲子専任講師、職員の白川啓子が出席。急成長を遂げる東南アジアの日本語事情を白川啓子が報告する。

 初ベトナムの二人がホーチミン市街を走るタクシーの中で「うわあ!バイクがすれすれ」「ぶつかる!」と怯えているのを余裕の笑みで見守る白川。ふっ、私なんかこの前、ホーチミン市在住の卒業生に乗せられて、あのバイクの波にもまれたもんね。道路を覆い尽くすバイクは一番ベトナムらしい光景。昼も夜も若い人が多い。急成長のエネルギーを感じる。
   今回の提携プログラムの内容は、まず日本の建設業界への就職を目指すベトナムの青年をHCMUTEが募集し、半年間の日本語教育を行う。来日してYの日本語学科で日本語をみがき、1年後に修成に進学。その2年後に日本で就職するという筋書きだ。将来はベトナムの日系建設会社で管理職に就く人も出るかもしれない。
   ついこの前まで、日本に来る留学生の出身国は1に中国、2に韓国だったが、今やベトナムが韓国に替わって2位の座を占めている。Yも一昨年から現地募集を行い、2014年10月に2名、今年4月に5名と、ベトナムからの留学生を増やしつつある。今回の出張でも3名の留学希望者と面接試験を実施した。3名とも女性で、通訳無しでもインタビューに答えられるだけの日本語を習得済みだ。
   今の、そしてこれからのベトナムと日本とのつながりを体現する女性たちを、次号との2回に分けて紹介する。

サイゴンで出会った女性たち
チャン   トゥ   ハさん

   調印式当日、ブルーとピンクの美しいアオザイ姿で迎えてくれたのはHCMUTE准教授で、学内に設置された「日越就職トレーニングセンター(以下VJEC)」所長のハさん。電子工学が専門の理系女子だ。昨年秋の学校交流プログラムでは、他にいくつか大学を訪問したが、その中からHCMUTEを提携先に決めたのは、ハさんの熱意によるところが大きい。1月に来阪された時も、パーティ会場のどこにいるのか見失うくらい、精力的に飛び回っていた。
   持ち前の人懐っこさと押しの強さ、これがホーチミン女性の典型かしらと思っていたのだがさにあらず。実はハノイ生まれだそう。
   高校卒業後、選ばれて旧ソ連のキエフ工科大学に留学したハさん。ロシア語の習得は大変だったそうだが、努力で克服。「そのころ恋に落ちたの」そのお相手が今の夫さん。忙しいハさんの息抜きは「家族のために料理すること。美味しそうに食べてくれると本当に幸せ」と。
   最後に「ハさんにとっての日本は…」と尋ねてみた。
   自動制御システム分野の研究者として、世界の第一線にある日本のインテリジェントシステムなどに常に注目しているそう。教員としては、VJECで日本語と日本文化を学んだ学生たちを留学させ、彼ら・彼女らが日本企業に就職してグローバルに活躍するのが夢、と語ってくれた。

(次号では大阪出身の遠藤亜矢子さん、Yで学ぶ留学生のタオさんとニョンさんを紹介します。)

全国の仲間と知恵を集めて 加盟YWCA中央委員会報告

 5月23日(土)〜24日(日)、東京・国立オリンピック記念青少年総合センターに24の地域YWCAの代表が集い、2015年度加盟YWCA中央委員会が開かれた。今年度の委員会の目標は、@YWCAの現状と課題に共通認識を持つ、AYWCAの将来構想について話し合い、次総会期のビジョンを作り、活動展開のあり方を見出す、B世界YWCA総会に向け動きを共有し、全国のYWCAの協働をはかる、の3点だ。
  23日の議事では浦和YWCA解散、日本YWCAや全国幹事会などの報告事項、世界YWCA総会への派遣、今後のYWCAの組織と運動などの提案がなされた。午後からはファシリテーターとして全国の市民団体、行政、企業などで講座や広報コンサルティングを行っている吉田知津子さんを迎え、「YWCAの原点に立ち返り次期総会に向けたビジョンをつくろう!」をテーマにワークショップが行われた。続いて社会貢献活動の拠点となる地域YWCAが次総会期に重点的に取り組もうとしている活動をグループに分かれて話し合い、プレゼンテーションを行った。しかし、これまで掲げていた主題とミッション(使命)に替わり、世界YWCAと同じ「変革をもたらす大胆なリーダーシップ」をテーマとすることに異論も出された。
   24日の協議ではYWCAの被災地支援事業を検討し、「福島の今を考える」をテーマに福島の日常を写真で記録し続けている赤城修司さんと『青空保育たけの子』を運営する辺見妙子さんのプレゼンテーションが行われた。放射能と暮らす異常な日常を普通としなければならないストレスや子ども達の現状が浮き彫りとなった。
 午後からは国会前に移動し、ヒューマンチェーン「止めよう!辺野古基地建設 許すな!日本政府による沖縄の民意の圧殺を」に合流した。3万人以上の人々が青い服を着て青い波で国会を取り囲み、沖縄との連帯をしめした。

(会長 小澤 裕子)

YWの窓 戦後70年に寄せて

  戦後70年に思いをめぐらせるとどうしても、敗戦の年に受けた2度の大空襲で大阪の街が全くの焼土となってしまった事を思い出す。2度目の空襲で大阪YWCAの周辺は殆ど焼失した。そのさまは、YWCAから当時の阪急百貨店がすぐ目の前に見えた程。YWCAの会館は傷つきながらも守られて残った。
 8月敗戦。戦中は息をひそめていた会員、学生、中でも特に元気だったBG(有職青年)グループのメンバーは、皆に会える、また一緒に勉強が出来ると、次々と集ってきた。「戻れる場」、すなわち会館が私たちの手に残ったことは大きな喜びであり、復活への「力」であった。もう一つの幸いは、日本YWCAがこの戦いの終わりを見据えて、国際団体、社会教育団体としての今後のあり方について検討を重ね、それを敗戦後速やかに各市YWCAに伝えたことである。これを力として活動を開始、立ち上がりは早かった。
 先達は時代の必要を見出し、積極的に働いた。若い会員は共に働くことにより、一人ひとりが育てられた。大阪YWCAが10年毎に大きな事業を成し遂げてきた歩みには、YWCAを愛した先達の着眼点、実行力があった。YWCAはとどまっていない。創立100年に進む喜びを抱きつつ、常に新たなる力を加えられて、前のものに向かって体を伸ばしつつ、共々に歩みましょう。

 (元総幹事・会員 大見川 昭子)

社会福祉法人大阪YWCA 新たな事業と新園長たち

 この春、大阪YWCAグループにまた新しい保育園が誕生しました。小規模保育事業『こひつじほーむ』です。
 旭区の大宮保育園から歩いて10分ほどの距離、保育ママ事業を行っていた場所を倍に広げて、乳児から2歳までの12人を預かります。小規模園ならではの家庭的な雰囲気満載、お友達と一緒に過ごす“みんなのおうち”です。長く愛される園になることを願っています。園長は植木知子さん。大宮保育園で主任を務めた大ベテランです。
 一方、大宮保育園では17年間勤め定年を迎えた太田麗子前園長に代わり、新しく宮崎祐園長が誕生、新体制のもと職員一同新たな気持ちで子ども達と向き合っています。
 お二人の新園長に抱負などを聞きました。

(聞き手 編集部 )

Q.日々の保育の中で気づかされることは?
〈植木〉毎日の子どもの視線・表情や関わりの中から、日一日と関係が深まっていくのに気づかされます。保育士冥利に尽きる嬉しい瞬間です。
〈宮崎〉子どもの目線を通して日常を見直すと、虫や花の小さないのち、好き・嫌いの感情もいきいきとして世界がとても新鮮。与えることよりももっぱら与えられています。

Q.今までの子どもたちや保護者との関わりの中で、 心に残った出来事は?
〈植木〉嬉しい事や楽しい事は沢山ありますが、心に残っているのは保護者との思いが通じ合わず辛い思いをした事です。保護者の思いに寄り添う事の大切さ・難しさを感じました。今後の大きな課題でもあります。
〈宮崎〉未熟な私ですがお母さん達の笑顔に支えられているなあと感じています。この先「難題」に直面したときこそ、向き合える関係でありたいと思います。

Q.今後の抱負を
〈植木〉保護者の方々と保育士達と共に子ども達を真ん中にして、心の育ちを大切にした暖かい保育園を目指していきたいと思っています。
〈宮崎〉「女性と子どもと平和のために働く」のがYWCAだとすれば、保育園はまさにそれ。時には社会に対して声を上げていく感性と行動力を持ちたいと思います。

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