本の好きな子どもで、『やかまし村のクリスマス』など、絵本の世界に行ってみたいなと思っていました。印象的な本は『ウタリーの星』、誕生日に叔父がくれたアイヌ民族の話。差別や苦しんでいる人たちに心が痛むと同時に、独自の文化、生きる力に心動かされたのを覚えています。
思想しつつ 生活しつつ
中学、高校は、自由学園で学びました。教育理念は “思想しつつ 生活しつつ 祈りつつ”。私が創立者の羽仁もと子さんをすごいなと思うのは、教育を学校内に留めず社会に働きかけることを重視したこと。大凶作の年には生徒達と東北に行って支援活動を行い、北京生活学校を設立して北京で女子教育にも従事。戦前にフランス・ニースであった教育会議で講演もしています。今で言う社会貢献活動を率先し、欧米にもアジアにも行く。グローバルだったと思います。
どんどんチャレンジして
人生って予期しないことが起こるし、思い通りにならないこともある。でも、やりたいことの火を消さずに実行すれば、前に進んでいける。それはYWCAで出会った人から学んだことでもあります。若い人は恐れるものは何もない、どんどんチャレンジしてほしいですね。
2年間の日本語教師養成講座修了後、一緒に受講した女性と2人でベトナムへ行き、1年半ベトナムで日本語を教えました。今思い返せば、初めの頃の授業は授業と呼べるものではありませんでした。「この文型は何が大事で何を教えなければならないのか」という的を絞れておらず、必要のない説明を付け足し、かえって学生たちの理解を難しくしていました。ただ教えることだけに精一杯で、学生とコミュニケーションを取り合って進めるような有意義な授業ができませんでした。分かりづらい授業をしていたが故に、学生たちの集中力は長くは続かず、「先生、早く終わりましょう」と言われる始末。 そんな日々の中で思い出されたのが日本語教師養成講座で教えて下さった先生方の言葉です。「この文型でこの教え方は絶対にダメ」「日常会話を意識してストーリー性のある日本語の教え方をする」など。特にストーリー性のある日本語を教えるということを意識することによって授業に幅ができ、初めの頃は苦痛にさえ感じていた日本語を教えるということが楽しみに変わりました。また、どの先生方も口を揃えて仰っていた授業準備の大事さ。授業の準備は自分が主人公になり台本を書くようなつもりで作りなさいと。その言葉を常に胸の中に置き、授業の流れを想像して十分に準備をすることによって自分自身に余裕が生まれ、学生と綱引きをし合うような楽しい授業が自然とできるようになりました。
各専門分野のプロである経験を積まれた先生方のお言葉は、どんな時も良い授業をするヒントとなり、現在も日本語学校で日本語教師を続けている私の心の中で生き続けています。
私が日本語教師を志したのは、留学を経験し海外に大きな関心を持つようになったこと、大学で言語について学び、言葉に興味を持ったこと、そしてあらゆる段階で私の夢を応援してくださった先生方のように私も、夢を持っている人の手助けをしたいという思いからでした。 大学卒業後に日本語教師養成講座に通い始めた私にとって、社会人として活躍してこられた様々な年代の方たちと共に同じ目標に向かって勉強した時間は有意義なものでした。授業では、日本語の仕組みや日本という国について学び、日本をこれまでと違った角度から客観視することができました。実習では、授業内容以前に、学習者のレベルに合わせた言葉選びの難しさ、教えるその言葉を、いかに学習者が実際の場面を想像できるように提示するか、頭では分かっていても授業に活かせない歯がゆさなど、今は毎回の実習が失敗と挑戦の連続。実習を終える度、もっと学習者の為になるような授業がしたい、もっと自分の知識をつけたいという意欲が湧いてきます。 卒業後は海外で、目の前の学習者が日本語を学習して何をしたいのか、そして私はその夢に対しどう手助けが出来るのか、という自分の根底にある想いを大切に、日本語教師として学習者と向き合い共に成長してゆきたいです。
いつかはホストマザーになってみたい、と思っていましたが昨年チャンスが巡ってきました。大阪YWCA専門学校・日本語夏期集中コースで学ぶために台湾から来日した二人のお嬢さんをお預かりすることになったのです。 二人とは、私は英語で、夫と娘たちは日本語を主としてコミュニケーションが始まりました。二人ともとても愛想が良く、学んだ日本語を使ってよく話をしてくれました。 たとえ言葉が通じなくても、留学生には日本の母としての気持ちは十分に伝わっていると思います。特別なことをする必要はなく、自分の生活ペースに彼女らを巻き込んで、大家族生活を楽しんだ感覚です。年頃の二人だったのでゆっくりとお茶をしながらのおしゃべりが一番思い出になったように思います。 人を思いやる気持ちは世界共通のことで、他人と共存するための基盤です。このことを心にとめてこの大切な出会いを自分のこれからの人生のステップにしたいと考えています。