全国女性シェルターネットは、女性への暴力の根絶を目的に、直接支援から政策提言までDV被害者支援団体の幅広い活動をつなぐ全国ネットワークで、大阪YWCAもその一員です。
内閣府男女共同参画局が「女性に対する暴力をなくす運動期間」と定める11月12日〜25日を前に、同ネットの近藤恵子さんにご寄稿いただきました。
DV防止法およびストーカー規制法の改正が行われ、性暴力犯罪被害者への回復支援施策は少しずつ進展しています。けれども、暴力被害の実態はむしろ深刻化・苛酷化の一途をたどっています。成人女性の3人に1人がDV被害を受け、20人に1人が殺されるかもしれない危険な目にあい、10人に1人がデートDV被害を体験し約8%がレイプ被害にあっています(内閣府「男女間における暴力実態調査」以下同)。
しかし、被害者はどこにも相談できず(デートDV被害者の3割、DV被害者の4割、レイプ被害者の7割がどこにも相談していない)、適切な回復支援を受けることなく深刻な後遺症に苦しめられています。デートDV被害者の6割、レイプ被害者の7割が被害後に心身の不調・不眠・男性恐怖・退職や転職・退学や転学・転居・自尊心の崩壊などの生活上の困難を訴え、精神疾患を発症したり自殺未遂を繰り返したりしています。
そして、加害者は責任を問われることがありません。300万件近い性暴力犯罪が起こっていると推計されるにもかかわらず、警察での性暴力被害の認知件数は年々減少傾向にあり、強かんの認知件数は2006年に1948件だったものが、2011年には1185件に減少し、検挙された加害者は、1460人から933人に減りました。さらに、起訴率は2006年に58.3%だったものが2010年には47.0%にまで下がりました。ほとんどの加害者は不処罰のままなのです。
ストーカー殺人や児童をターゲットにした性暴力犯罪など、とくに、若い女性や子どもたちの被害が激増しています。この社会はますます女性や子どもへの暴力性を増しているといわなければなりません。
2008年、国連事務総長は「すべての国が、国際人権基準に沿って女性に対するあらゆる暴力の防止に取り組み、加害者処罰の国内法を 2015年3月までに制定・施行すること」を求める声明を出しました。
「女性の人権を保障し、すべての女性が輝く社会を実現する」と国内外にアピールした日本政府には、包括的な性暴力禁止法制の確立に着手し、加害者の不処罰を終焉させ、暴力と貧困の連鎖から女性と子どもを開放する責任があります。 (特定非営利活動法人全国女性シェルターネット 近藤 恵子)
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