憲法第96条が変えられそうになっています。この96条がかえられると、第9条だけでなく、すべての人権条項と天皇条項が簡単に変えられるようになってしまいます。現在、自民党も日本維新の会もみんなの党もこの96条を変えようと言っています。今の憲法の改正手続きがきびしすぎるので、新しい時代に対応できないので、まず改正手続きを変えようというのです。現行憲法の改正手続きは、衆議院ですべての議員の3分の2以上の賛成、そして参議院ですべての議員の3分の2以上の賛成で改正の発議を国民にすることができるというもので、それに従って国民投票がされ、過半数の賛成を得れば改正できる、というものです。そして、今のところ、三つの政党が、この3分の2以上を過半数にしようと言っています。3分の2以上は厳しすぎるというのです。しかし、3分の2以上にしているのには、それなりのわけがあります。憲法がそう簡単に変えられたら困るのです。そうなると皆さんもよくご承知の9条も簡単に変えられてしまいます。それと、憲法の人権条項も簡単に変えられてしまいます。一例をあげます。第21条はこうなっています。
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。A検閲は、これをしてはならない。
自民党の『日本国憲法改正草案』では、第1項に次の第2項を加えるというのです。
2 前項の規定にもかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは認められない。
私はここを読んで、ただちに治安維持法を思い出しました。最近、現在の憲法下でさえ言論の自由を侵す逮捕事件が頻発しています。それなのに自民党案のようになってしまうと言論の自由はないも同然になってしまうでしょう。その他たくさんの条項に手がいれられています。96条をかえるのは9条を変えるためだと言われてきました。そうではありません。全面改「正」が目的なのです。自民党の改正案は、全面改「正」案です。自民党は、結党以来、全面的に変えようと志してきたのです。96条を過半数にすれば、そのことはあながち不可能ではありません。一度ではできないでしょうが、何回かで、かなり実現するでしょう。それと、わたしが心配しているのは、過半数にしてしまえば、憲法はほとんど憲法としての重みを失ってしまうのでないか、ということです。「変えやすくする」というのは安定性と堅牢さを失うことになり、ひどい混乱が日本社会を襲う恐れさえあるでしょう。過半数にするということは、憲法を憲法でなくすることになるのではないでしょうか。この文章を読まれた方々が、夏の参議院選挙で賢明な投票行動を取られるように切に願います。取り返しのつかないことにならないように。
古かく莊八 (こかくそうはち、高石教会牧師 )
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