国内で活動している民間シェルターの多くが加盟しているNPO法人全国女性シェルターネットが、毎年、全国規模で行っている「全国シェルターシンポジウム」。15回目となる今回の大会テーマは「女(わたし)のからだは女(わたし)のもの DV・性暴力救援センターを全国に! 〜とりもどそう性の自己決定権〜」です。
会場となった大阪府阪南市は人口約2万8000人の小さな街ですが、2011年には「住民生活に光をそそぐ交付金」を活用して、全国に先駆けて行政が民間シェルターの支援を行った画期的な街です。
■1日目
弁護士・雪田樹里さんによる基調講演「性暴力被害者への法的支援の現状と課題」に続いて、雪田さんを含む4名のシンポジストが、医師の、弁護士の、カウンセラーの、民間支援者の立場から、性暴力被害者の救済について現状と問題点を語りました。
その中で明らかになったのは、警察捜査で受ける二次被害はもとより、加害者を検挙する側の性暴力被害に対する無知・無理解から、現状の法律や制度では被害者の本当の救済は望めないということです。雪田弁護士が、明らかに強姦であるにもかかわらず無罪判決が出た判例を具体的に挙げていくと、会場からは大きな憤りの声。それらの声を受けて、近藤恵子全国女性シェルターネット共同代表が「刑法改正」を強く訴えられたのが印象的でした。
同時に、非情とも言える現状にあっても、全国の「女」達が、それぞれの立場で知恵をしぼって、被害者救済のために日夜奮闘していることに、心強さを感じました。1500名の「女」達のパワーを持ってすれば、一滴のしずくが岩を穿つ(うが)ように現状を打破していけるのではないかとの希望を持ちました。
■交流会
飛び入りで元担当大臣福島みずほ議員が壇上に。「今、社会現象となっている様々な問題、女性に関する問題の解決は女性の手で!女性力を発揮して頑張りましょう!!」との熱いエールに会場は大いに盛り上がり、明日へのエンパワーとなった一時でした。
■2日目 分科会
2日目は午前中に8つ、午後に9つの分科会が行われました。
私達大阪YWCAは「暴力の連鎖を断つ」というテーマで分科会を担当。「DV家庭で育ったこどももDV被害者」「DVと児童虐待は表裏一体」と言われるように、DV防止と児童虐待防止を切り離して考えることはできません。
今回の分科会の発題者・荒巻(あらまき)仁(じん)さんはDV家庭で育ち、自身も父親から暴力を受けて育ちました。自分の存在価値や生きる目的を見出だせず、一時は「この世で幸せになることは不可能」とまで思いつめました。
そんな荒巻さんが、現在は福井県で「父子笑伝」を合言葉に、父親として、地域の子育て支援や東日本大震災で被災したこども達の支援を行っています。また、保育園・幼稚園・小中学校での絵本の読み聞かせを通して、DV・虐待といった暴力にさらされているこども達の心のケアも始めました。
DV家庭のサバイバーでありながら、「暴力ノ―」を訴え、生き直しを実践する荒巻さんから、暴力の連鎖を止める意思と知恵、具体的な実践のあれこれをお話して頂きました。サバイバーとして、良き男性モデルとして、今回の荒巻さんとの出会いが暴力に苦しむ女性や子ども達を救う助けになればと願います。
もう一人の発題者は、皆さんよくご存知の金(きむ)香(か)百合(ゆり)さんです。金さんは自ら構築した「自尊感情栄養理論」を暴力の連鎖を止めるためのひとつの知恵としてお話しくださいました。
分科会の会場は、荒巻さんの壮絶な生い立ちに声も出ないほどの緊張感に包まれたり、お二人のユーモアあふれる語り口に思わず笑い声が上がったりし、最後には暖かい涙で癒される空間になりました。そして終了後、荒巻さんの絵本「あらじんのまほう」を買うための長蛇の列ができました。
■全体会
2日間の大会は、包括的な「性暴力禁止法」の制定やDV根絶事業の予算拡充、医療機関をベースとするDV・性暴力被害者回復支援センターの設置等の要望を盛り込んだ共同アピールを採択して、幕を閉じました。
文責 女性エンパワメント部
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