3・11から1年がたつ。
福島の人たちは3・11以降、毎日まいにち生活行動の一つひとつにつらい決断を迫られている。放射能管理区域に相当する汚染地(毎時0.6μ(マイクロ)Sv(シーベルト)以上)は、福島県の浜通り・中通りのほとんどと会津盆地の中心地に拡がり、生活の場とは言い難い地域となってしまった。にもかかわらず、避難することも出来ずにそのまま生活せざるをえない。せめて子どもと妊婦だけでも国が補償して避難させる事が求められているが、国は見向きもしない。
そんな中、今年の1月から、日本キリスト教団大阪教区から派遣され、主に福島県の教会関係で子ども健康相談会を毎月一回担当することとなった。子ども達の状況は深刻だ。外遊びにしても時間制限の基準が目まぐるしく変わって判断しにくい。学校給食は、この時期にあえて学校側が「地産地消」を掲げて地元産食材を強制し、母親が牛乳だけは飲ませたくないと言っても先生が牛乳を飲めたかどうかのチェックをする。そんな中で子どもはどう抵抗できるのだろう? 役人たちは原則論で子どもを管理してくる。先生達も役人になり下がって生きていくしかない。
評価が分かれることについてはお母さん達の反応も二極分化している。えせ専門家が安心キャンペーンを張って県が後押しするものだから、不安めいた話をむやみに出来ない。相談会の部屋がプライバシーの守られている事を確認してからワッと泣きだしてしまうお母さんがいる。「ここでは心配してもいいのですね」とか「話を聞いて下さっただけでもうれしい」という言葉に会うたび、やるせなくなる。相談項目の中では鼻出血、咳、皮膚のトラブル、下痢、口内炎、精神不安定、などが多い。内部被ばくの専門家・肥田(ひだ)舜太郎医師によれば、原爆ヒバクシャの初期症状に下痢が多いとの事。
一方、福島や関東から和歌山へ避難してきた人たち(大変だ、と行動を起こしたのは子どもを抱えた女性たちがほとんど)は連れ合いを残したままなので、夫婦間の交流が極端に減少して意思疎通がうまく出来なくなり、二言目には離婚が話題になるという殺伐とした生活をしている人が多い。子どもはそうした親たちの様子を肌で感じてビクビクしているように見える。
原子力を推進したい勢力は人体への影響を極端に低く見させようと苦心惨憺しているが、市民自ら測定し声を上げ始めた。もう騙されまい。
山崎 知行(医師。84年和歌山にて内科医院開業。05年から3回チェルノブイリ訪問。)
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