「核」否定の思想に立つ―。日本のYWCAでは1970年以来、原子力発電を含む「核」は人類と共存し得ないという信念に立って活動を続けてきました。3月11日の東日本大震災に伴う原発震災を受け、大阪YWCAでは4月16日(土)に『未来バンク』など建設的提案で知られる田中優氏を招き、「電気と私たちの未来について考えよう」をテーマに緊急講演会を開催。3階ホールに250人が詰めかけ超満員となった講演の一部を報告します。
何を心配すべきか
人体表面が直接放射能に接する外部被曝より、口・鼻などを通して体内に取り込む内部被曝を問題にすべきである。セシウムは筋肉や子宮に蓄積され、胎児に影響を与える。チェルノブイリでは事故後に生まれた子どもの甲状腺がんが多発したが、卵子への影響ではないかと考えられている。地球規模で地震が増え続ける中、原発の想定震度が阪神淡路大震災より小さいままでよいわけがない。
原子力は安くはない
原子力は水力や火力に比べ安いとされているが、六ヶ所村再処理施設などの使用済燃料処理、実験炉のもんじゅ、廃炉費用等を経費に含めると、原子力が最も高い。日本の電気料金はアメリカの3倍。高い電気料金は経済力を低下させるが、経済界は電力会社の言いなりである。ちなみに、日本のメディアを支える広告宣伝費は、電力各社の合計がトヨタを抜いて1位になった。メディアは電力会社の不都合になる情報は流さない。
原子力に頼らない方法
仕組みを変えるのが一番だ。真夏のピーク時に対応できる発電能力が必要と言われるが、ピーク時に相当するのは10時間程度、年間総供給時間の0.1%にしかならない上、その消費量の91%が企業によるもの。家庭では消費量が増えると電気料金単価が高くなるが、企業は使えば使うほど安くなる。ピーク時の料金を高くするなど仕組みを変えれば、企業は節電に動く。
ヨーロッパでは新設発電の60%が自然エネルギー。アメリカでは昨年、原子力発電よりも太陽光発電が安くなった。九州大学では海に浮かべる風力発電を開発しているし、アイスランドの地熱発電のシステムは日本製である。多様な可能性と、それを実現する技術はすでに存在する。
電力事業の独占体制にNO
電力事業は発電・送電・配電から成り立っているが、日本ではすべてを電力会社が独占しており、電力会社以外には売ることができず、買ってもらえない体制。ヨーロッパでは送電線は公共のものであり、自分の好きな電源を選んで買うことができる。
今回の福島原発の賠償金は何兆円にもなり、国が立て替え払いをするという。この機会に、送電線と莫大な広告宣伝費を借金のカタに取り上げ、送電線自由利用の原則にすれば、原発以外の方法で作ったエネルギーを誰でも流すことができるようになり、ヨーロッパ型の電力体系にできる。
可能性を信じて動き出そう
後の世代に「3・11がターニングポイントだった」と言ってもらえるために、私たちにできることはたくさんある。無力と微力は全く違う。私たちが持っている微力が集まれば社会を変えることができる。
未来は可能性に満ちている。可能性を知り、信じ、動き出すことである。
(文責 編集部)
電気こぼれ話
本文で紹介できなかった電気に関するデータをご紹介します。
(出典:田中優さん講演録他)
37万人
ドイツでは、自然エネルギーに助成金を出したところ、新たに37万人の雇用が生まれた。
11倍
フランスの、夏場の電力需要ピーク期の料金の、通常料金との比較
5,000億円
日本政府が電力会社に毎年出す補助金。原発1基分の建設費に相当する金額で、この補助金は50年間続いている。
3,954回
1970〜2000年の間に日本で起きた震度5以上の地震の数(同期間、仏・独は2回、米国は322回)
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