「7人に1人の子どもが貧困」―。09年10月厚生労働省は、18歳未満のすべての子どもの貧困率が14.2%であると発表しました。これは、国際的にみても高い値であり、比較可能なデータのあるOECD22カ国中8番目の高さです(※1)。「一日の主な栄養源が学校の給食」「費用が出せず、修学旅行に行けない」「学費を負担できずに高校を中退する」といったように、子どもの貧困は、教育・健康などの格差、虐待、社会からの孤立など、子どもに多くの影響をおよぼします。 政府発表の子どもの貧困率だけでは「実態や定義がわからない」という声が多くありますが、子どもの貧困を解決するためにはまず実態を把握し、包括的かつ具体的な解決策を打ち出すことが必要です。そのため、国際子ども支援NGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(以下SCJ)は、10年より“Speaking Out Against Poverty(SOAP))〜夢や希望をうばわれないために〜”を開始しました。 「子どものことは子どもが一番よく知っている」。子どもの権利の視点から、まずは京阪神の小学生〜高校生約100名を対象に、子どもの貧困観のヒアリング調査を実施しました。その結果、子どもたちからも「他の子よりも違う感じやから、学校行ったとしても不安やと思う、その子が。仲良くできるんかなとか。」「自分じゃどうしようもできへんくて、でもお母さんに言ったら困らせるだけやなって思ったら、余計に何もできへんかな。」「金がなかったら、病院とかちょっと控えよかって感じするかも。」といった声があがってきました。現実に貧困下にある子どもが偏見を持たれたり心の傷を負ったりしないよう、あえて自分の体験は話さないというルールのもと調査を実施しましたが、子どもたちの貧困観は自分自身や身近な友達の体験が反映される結果となっています(※2)。 SCJは、当事者である子どもたちが、調査への参加を通して声をあげ、社会を変える主体となるよう後押しすると、また、子どもたちの声をイベントやメディアを通じて世論形成や政策提言へとつなげることをめざしています。 子どもの貧困は世代を超えた連鎖が危惧され、まさしく生きる・育つ・守られる・参加するという「子どもの権利」のすべてを奪う深刻な問題です。政府が解決策を講じるよう、私たち市民社会から声をあげていくことが求められています。 ※ 1 こどもの貧困白書編集委員会(2009)『子どもの貧困白書』明石書店 ※ 2 本調査結果は、4月にSCJのHPにて公表予定 http://www.savechildren.or.jp/ers/soap/index.html
このプロジェクトは、地域も年齢も広範囲の人々を対象とした、まさにYWCAならではの取り組みでした。 軸となった保育園では、親と子が職員と毎日顔を合わせるという利点を生かし「親も子も、誰をも暴力の被害者・加害者にさせない」を合言葉に、こどものための「友達パネル」、お母さんお父さんのための「ハッピースタディーズ」、「夕食会」等のプログラムを行いました。援助者である職員が、よりよいチームワークでスキルを発揮できるよう、自己覚知のワークショップや暴力防止のための勉強会も実施しました。 今回の目玉は、保育園を飛び出していろんな場でプログラムを展開していったことです。保育園児の保護者には、日々プロである保育士にこどもの発達についての不安や子育ての悩みを気軽に相談するチャンスがあり、こどもの様子から未然に虐待の芽を摘むこともできます。そこで、「今、本当に援助が必要なのは、保育園に通っていない未就園児や卒園した小中学生なのでは?」と考え、援助の対象を広げていきました。 (シャロン千里こども館での『親子でイキイキリレイションシップ』には、若いお母さんから「他の子育てサークルとは違って具体的なアドバイスがもらえてありがたい」「私の気持ちが軽くなると不登校気味だった息子が学校に行くようになった」といった声が寄せられています。 さらにユニークな実践は、地域の中学校で行った「デートDV防止」の出前講座です。これまでDV防止に取り組んできたYWCAのノウハウと人材を生かした企画で、受講した中学生からは「暴力には身体的暴力以外にことばの暴力や無視もあると解った」「親しい間柄ほど気をつけないといけない」といった感想が届きました。思春期に身近な問題として暴力について学ぶことは、負の連鎖を断ち切る有効な手立てです。 このプロジェクトの報告書も、他に例をみないアイディアに満ちたものになりました。若いお母さんがいつでもバッグの中から取り出して、読んだら肩の力が抜けてエンパワーされるものを目指しました。冊子の半分を占める『お母さんと子どものためのホッとしてピンっ!とくる19のヒント』は「ことばがすっと心に届く」「子育ての元気をもらった」と好評です。ぜひ手にとって読んでみてください。