2010年10月に6度目のアフガン入りを果たした。カブール市内の「インディラガンジー子ども病院」には、重篤な子どもがたくさん入院している。やけど病棟はいつ訪れてもこの世の地獄のような様相だ。全身50%、60%の大やけどを負った子どもが次々と運び込まれてくる。特に多いのが熱湯をかぶるパターン。1歳半の幼児の背中、赤い肉が露出し、その肉にガーゼが食い込んでいる。なぜこれほどやけどの子どもが多いのか?それは貧困である
アフガンの一般的な家庭では台所と寝室が分かれておらず、電気のない夜は漆黒の闇の中である。11月ともなるとカブールの夜は氷点下まで気温が下がる。そこで人々は暖をとるため、ゴミや木切れで湯を沸かす。日本では通常調理台の上で湯を沸かすが、アフガンではそれが地べた。しゅんしゅんと湯気をあげるヤカンに赤ちゃんが近づき、熱湯を浴びるのである。30年以上に及ぶ戦地ゆえ、アフガンの生活基盤は貧しい。その影響に最も苦しむのが女性や子どもなのだ。
やけど病棟の隣が新生児集中治療室である。案内のハビーブ医師がその赤ちゃんの衣服を脱がせた時、私は言葉を失った。
「双子がくっついているのか?それとも・・・」
その赤ちゃんの股間から、大きな腫瘍が出ているということを理解するのに、数秒かかった。「コンジンタル・テラトーマ」(先天的奇形)とハビーブ医師。
私はイラクでもこのような先天性奇形の子どもを数多く見てきた。個人的には米軍の使用した劣化ウラン弾の影響、あるいは武器弾薬の化学的毒性が原因と思うのだが、残念なことにイラクもアフガンも治安が悪いので、専門家の調査が進んでおらず、原因の特定はできていない。
ヒロシマ、ナガサキの経験から、私たちはこれ以上のヒバクシャを生まないように核兵器廃絶を訴えてきた。しかし現実には新たなヒバクシャが生まれ続けている。核廃絶の運動と、劣化ウラン弾禁止の運動をセットにして世界に発信していくべき時が来ている。
西谷 文和(にしたに ふみかず)
(吹田市役所勤務を経て、フリージャーナリスト。イラクの子どもを救う会代表。2006年「平和・協同ジャーナリスト大賞」を受賞。)
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