2008年5月4〜6日のことは、平和への新時代を開く画期として語り継がれるだろう。千葉市の幕張メッセで開かれた9条世界会議に、日本各地から延べ2万人が、そして世界の32ケ国・地域から150人以上の人々が集まった。会場に入れない人が3000人を越えたことは、呼びかけ人の一人として申し訳ない思いでいっぱいだ。 冒頭の基調講演をした1976年のノーベル平和賞受賞者マイレッド・マグワイアさんは、お母さんのような雰囲気の優しい方だが、そのお話は厳しいもの。憲法9条は60年間多くの人々を勇気づけ、希望を与え続けてきたが、後退もあるとし、日本の再軍備と軍事化は東アジアの軍拡の引き金になりうるだけでなく、日本が9条をないがしろにすると攻撃の標的とされ、世界を危険な状態に置くことになると警告した。またブッシュ大統領が始めたイラク戦争を断罪し、アメリカは不法な占領を直ちに終わらせ、謝罪して新マーシャルプラン(復興計画)を作るべきだと訴えた。日本の核廃絶のための努力に感謝し、アメリカが原爆投下を謝罪し核軍縮の先頭に立つよう促した。 30年間続いた北アイルランド紛争の原因は不正と不平等にあり、暴力的手法では決して解決せず、当事者の非暴力による対話こそが真の解決への道だと知った彼女は、そこでの市民社会の役割、特に民衆レベルの許しと和解こそが大切だとし、女性と若者が友情と和解を生み出すことに期待する。そして、日本はまずアジア諸国の人々に対して過去の行為を謝罪すべきで、そこから東アジアの和解に歩みだすよう訴えた。経験に裏打ちされた彼女の一言ひとことは、心の奥深くにしみわたった。 翌日の分科会を含めて、女性の活躍が目覚しかった。会議開催のきっかけとなった1999年のハーグ平和会議の事務局長コーラ・ワイスさん、アメリカの元陸軍大佐・外交官でイラク戦争に抗議して辞任した平和運動家アン・ライトさん、イラク支援の高遠菜穂子さんなどから、実践を踏まえた貴重な発言が続いた。音楽や舞踊もアイヌや沖縄、奄美大島などの文化を伝える多彩なものだった。5日の日本YWCAの「核のない地球@9条」のワークショップも盛況で、平和教育専門家ベティ・リアドンさんも参加し、アメリカ人として原爆の問題への真摯なコメントを下さり、嬉しかった。 会議直前まで、大会場が埋まるかどうかを心配していた私が恥ずかしい。会議の成功のために走り回ってくれた若者たちに感謝したい。憲法9条は世界の宝だという熱い想いの人々がこんなにもたくさんいることを知った私たちは、これからも勇気と希望をもって歩み続けたいと切に願う。
(9条世界会議呼びかけ人 石井摩耶子(日本YWCA会長))
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