「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。」(ヨハネによる福音書3章16節)
ひとりの少女が自らいのちを絶つという出来事から、電話による自殺予防の活動がはじまりました。1953年、チャドバラー牧師がロンドンで起したこのボランティア活動は、いまでは世界100カ国、1000を超える都市に広がっています。
日本では、『望みの門』という女性のための更正施設にドイツから派遣されていたルツ・ヘットカンプ宣教師の呼びかけで、まず東京で1971年開局。その2年後に「関西いのちの電話」ができました。
私は、聖和大学卒業後、大阪YWCAのホステルに居住していたご縁で、岡本千秋さんほか諸先輩のもとで、YWCAに係わりました。女性の自立と人権のための働きに目をとめ、環境問題、社会的弱者への視点へと導かれました。YWCAに育てられました。
子育てをしながらカウンセリングを学び、岡本千秋館長のミード社会館カウンセリングルームで、京都に移るまで仕事をしました。その中で、いのちの電話と係わることになったのは、来談者の自死を防ぐことの出来なかった私の自責・後悔の念からです。電話の即時性・広域性こそ緊急時に役立つと思い、「関西いのちの電話」の準備委員会に加わりました。
電話による援助活動とは、人生の危機に直面し、絶望のはてに生きる希望を失いつつある人々に24時間年中無休で受信するシステムです。受話器をにぎるのは2年間の養成研修を受け、認定されたボランティア。電話をかける人も受ける人も匿名です。指名したり、次回の約束なし、一回限り。一期一会の勝負です。そのようなしんどい活動ですが、全国に7500人の仲間がいます。
『良き隣人になること』を傾聴奉仕で実施しようという仲間です。創始者のチャドバラー師は、そのボランティアグループに「ザ・サマリタンズ」(善きサマリや人同盟)と名づけました。「永遠の命を得るには どうしたらよいか」との質問に主イエスが答えられ譬話(ルカによる福音書)で、「あなたも行って同じようにしなさい」と聖書は記しています。
降誕節のこの時期、「ひとりも滅びないで・・・」という聖書の言葉がこころに沁みます。電話相談の現場では誠実に真摯に、悩みに寄り添っている全世界のサマリタンがいることに励まされています。
平田真貴子(京都いのちの電話常務理事・事務局長)
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