〜デートDVを考える〜
ここに、ある男女のカップルのやりとりがあります。
Aくん「さっき、何してたん?何回も携帯に電話したのに出えへんかったやんか。」
Bさん「ああ、ごめん。Cちゃんの相談に乗っててん。」
Aくん「ほんまか?どうせ、男といてたんやろ。おまえみたいな軽い女しらんわ。」
Bさん「はあ?なんでそうなるの?」
Aくん「ごまかすな!そんな態度とるとどうなるかわかってんやろな。」
Bさん「・・・。」
このやりとりを読んで、どんなふうに感じられたでしょうか。この男女のやりとりは、いわゆる「デートDV」の1例です。「デートDV」とは、若者が交際している相手に向ける暴力のことであり、最近社会問題として取り上げられることが多くなっています。
DVは結婚や妊娠を機に始まることが多いのですが、「デートDV」は性交渉のあった後から始まると言われています。「デートDV」の加害男性は、性交渉をもった時点で交際相手を自分の所有物と認識します。その結果、交際相手である女性が彼自身の思い通りに行動しないなら、暴力でもってでも自分の言うことを聞かせることが許されると考え、暴力を振るいます。それが、「デートDV」のしくみです。先ほど「デートDV」の例として挙げた男女のやりとりの場合、Aくんは、脅しという心理的暴力によってBさんに言うことを聞かせようとしています。この「デ−トDV」はDVの予備軍と考えられます。
では、なぜ「デートDV」が起こるのでしょうか。過去における虐待などの暴力被害による深い心理的ダメージが未解決であることと「デートDV」の加害行為には、強い関連があることが知られています。しかし、「デートDV」の大半は男性から女性に対して行われています。この性差があらわしているのは、「男性は女性に対して積極的にアプローチすべき」や「女性は男性を癒す存在であるべき」など、男性が主で女性が従といった関係を期待するジェンダー観を、個人的な問題を抱えた男性が都合よく解釈して、女性を支配してもよいのだと考えると、「デートDV」が起こりやすくなるということです。「デートDV」は、一般社会で受け入れられている不平等なジェンダー観がデートDVの生起を後押ししているという点で、社会的問題でもあるのです。
「デートDV」を予防するためには、若者たちに対して大人たちが若者の自尊感情を高めるような関わりをもつこと、さらに、適切なジェンダー教育を行うことが必要です。
(大阪YWCAカウンセリングル−ム カウンセラー 井ノ崎敦子
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