大阪YWCA会報(大阪版)

2004年8・9月合併号(抜粋)


<目 次>

[一面]
「ことばの学校」の思い出
 山口 俊郎

[二面][三面]
◇地域の子育てを支援して

YWの窓
 「夏場の節電」

男の目
 「冬のソナタ」をみましたか。

[四面]
専門学校あれこれ
 日本語学科

大阪YWCA・ピースアクション2004

その他



「ことばの学校」の思い出

 来年の3月に、25年間続いた週1回半日の療育教室(6人から8人の子どもが参加)を、私も還暦を数年過ぎ、子どもと体操したりするのが体力的に無理になってきたので、終了することになった。この「ことばの学校」は、'80年大阪YWCAの新会館オープンを記念し社会福祉事業の一環として始められたものである。10年前からは、千里センターに場所を移して今に至っている。知的障害、自閉症、言語発達遅滞など実に様々な障害を持つ子どもたちを受け入れてきた。現在のスタッフは8人であるが、山口、松井洋子さん、辻川さとみさんの3人は、開設当初から続けてやっている。これまでに登録した子どもは215名になる。2回だけの発達の評価や保護者への助言だけで終わった子どもも多いが、3年以上にわたって、毎週、隔週、月に一回、あるいは学期に一回と来てくれた子どもも多い。もっとも長いのは、8年にわたって毎週ほとんど休まず来所したW君の例である。

 「ことばの学校」の特徴をいくつか挙げてみると…
 第一は、就学前から15歳までを対象とする継続的な療育を提供できたことである。これは発達期のほとんどをカバーしているので、幼児期に遅れが大きかった子どもも、就学期や思春期の初めに大きく伸びることを多くの例で確認してきた。そして保護者にはいま急には大きな変化は望めないが、どれくらい待てば、またどのように待てば、きっと大きな変化を喜べる時が来るということを、発達の予測という形で伝えることもできた。

 第二は、どの子どもも、1回の来所で、個人療育(山口が指導)とグループ体操(松井さんが指導)、さらに保護者への助言を一度に受けられることである。異なる二つの場面で子どもと接するので、子どもの問題や発達をきめ細かく知ることができ、保護者との面接(松井が担当)でも、より具体的な助言や説明をすることができた。

 第三の特徴は、毎回、療育の時間以上の時間をかけて、一人ひとり子どもについてのカンファレンスを行い、どうすればどの子どもも、自分の持ち味を十分に発揮できるかについて議論を重ねてきたことである。発達の遅れがあると、ともすれば、訓練によって、より先に伸ばそうとしたくなるが、子どもがのびのびと行動をできる場を用意し、子どもにぴったりよりそってやり、子どもの発達を気長に待ってやること、これが療育での最重要課題であると思っている。
(山口 俊郎/精神科医、現在京都女子大学発達教育学部教授)

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YWの窓
「夏場の節電」

 先日、新聞の全面広告に、〈ウラン燃料リサイクルには欠かせない、再処理工場〉との見出しで、六ヶ所村の再処理工場の全景が掲載されていた。思わず力の差を感じた。原発がなければ、ウラン燃料は必要ない。にもかかわらず、「安定して電気を届けるには原子燃料サイクルの実現が必要」と声高に宣伝。
 近年、省エネ家電等の普及で、電力余りの現象が起こり、慌てて「業務用」の料金を大幅に値下げして需要を伸ばした。が、今度はトラブル隠しが原因で、昨年東京電力の原発17基中、16基の停止が続き、夏場に向けての電力不足が心配されると、大口契約の事業所に節電を依頼して回った。その成果で、何の支障もなく夏は過ごせたと聞いている。
 チェルノブイリの原発事故発生から18年目となり、この事故をきっかけに、世界中、特にヨーロッパは原子力関連施設の撤退をしている。我国でも電力の需要が伸び悩みのため、政府は原発の増設計画を大幅に修正するとのこと、この際、原発新設はしないと言って欲しいものである。
 夏場の節電を少し努力すれば「東京電力に限らず、他の電力会社も、原発なしで電力の需要は十分満たせ得るはず」と原子力資料情報室の西原漠さんは指摘している。
 この夏、原発はないものとして生活してみようではありませんか。
(会員)

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男の目
「冬のソナタ」をみましたか。

 韓国のテレビドラマ「冬のソナタ」が人気である。先日、書店で、この「冬ソナ」関連のコーナーを見て驚いてしまった。何種類もの本が発行されていて、どれも装丁が美しい。ハングル対訳のシナリオまである。このドラマがきっかけで、韓国語の勉強を始める人も多いという。
 20年程前、NHKハングル講座を聞き始めた頃は、その動機をよく尋ねられた。当時発行された『ハングルへの旅』の中で、茨木のり子さんは、「隣の国のことばですもの」と言うことにしている、と書いている。朝鮮とは海峡を一つ隔てているに過ぎない。日本は何世紀にもわたって朝鮮文化の恩恵を受けてきた。この「隣の国」という言葉には、この詩人の朝鮮に対するさまざまな思いがこめられてもいる。
 この6月、岡部伊都子著『朝鮮母像』が出版された。日本美術や文芸に母なる朝鮮を見出し、一方で、日本人の侵略と差別を鋭く糾弾している。そして、「もう拘束や対立、敵視ではない人類を創っていきたいと、世界中の人びとが願っているのではないでしょうか。」と。
 「今宵みし『冬のソナタ』に青春の心引き寄せ静かに眠る」(吉田稔/朝日歌壇)。「冬のソナタ」に魅せられた人に、茨木さんや岡部さんの深い想いが伝わればいいなと思う。  

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専門学校あれこれ

日本語学科
〜教えるということ〜

 日本語を教え始めて数年になります。常に教えるということの難しさに頭を悩ませている毎日ですが、この仕事を続けていきたいと思う理由として、教えられることもまた大きいということがあります。
 忘れられないのが、あるクラスでのことです。授業で「日本での生活」についての話になった時、ある学生が「日本での生活は大変なことばかりです。日本語も分からないし、仕事も厳しい。いやなことがたくさんあります。でも、YWCAの先生は、みんなやさしいです。私はここに来て勉強する時間が一番好きです。先生ありがとうございます。」と言いました。そのあと、他の学生たちも「私もここに来るのが好きです。」「先生は私たちにとても親切です。」「「先生、いつもありがとうございます。」と口々に言いだしたのです。しかし、私はそれに対して何も言うことができませんでした。
 というのは、その頃の私は教師になってから数ヶ月で、授業の準備をして教壇に立ち、2時間の授業をただこなすことで精一杯でした。クラスというものを相手にし、一人一人の学生については全く見えていなかったからです。いくつかあるクラスの一つで、それぞれの学生の背景やどんな気持ちで勉強しに来ているかまであまり考えていませんでした。学生がそのようなことを考えているなんて全く頭になかったのです。その学生たちの言葉を聞いてはじめて、クラスにいる一人一人の顔が見えてきたのです。それ以来、教師として一人一人の学生と向き合えるようになりました。
 今でもその学生たちに会いますが、今、「ありがとう」と言いたいのは私の方です。教師として大事なことに気づかせてくれて。そして、その気持ちを忘れないようにしようと思っています。
(日本語本科専任講師)

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大阪YWCA・ピースアクション2004

日本は本当に“平和憲法”を捨てるのですか?

7月3日(土)、大阪YWCA本館ホールにおいてダグラス・ラミスさんを迎えて、ピースアクションが開催されました。

ラミスさんの話から
 日本は平和憲法を捨てるのですか?この問いに対して日本政府の答えは“はい”である。そのような状況をつくっているのは、アメリカである。憲法を考えるとき日米安保条約は切り放せない。条約を締結した時、米国は他国への侵略戦争をしない、軍事力は戦争を抑止するためのものとしていたが、9・11以降先制攻撃・内政干渉・海外在住者への逮捕、監禁など体外統治権を実行し、国際法を破壊している。
 “押し付けられた憲法”という人がいるが、世界の意味ある憲法はすべて押しつけ憲法である。憲法とは元々国家権力を制限するもので、国家が押し付けるのではなく、国家に押し付けるものである。軍事力で本当に国民は安全になるのか?このことは歴史的記録から判断できる。世界的に見ても国家権力は自国民に対してふるわれることが多い。日本でも明治維新以来、軍事力が一番強かった時代に暴力によって殺された人数が最も多い。
 今後は軍事力に頼るのではなく新しい外交政策を考えていく必要がある。20世紀の冬の時代に逆戻りするような日本政府のやり方に、今こそ平和憲法を新しいものとして復活させ、9条を世界の反戦運動の中心として提示したい。

私たちは「護憲は時代遅れ」の批判にはもう動揺しない。平和憲法の理念が正しいと歴史が証明してくれる日が来ることに希望をつなげよう。
(ピースアクション実行委員会)

大阪YWCA・ピースアクション2004参加者から 平和へのメッセージ


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