「こどもとのパートナーシップ」
佐藤 幸男(さとう ゆきお こどもソーシャルパートナー)
今、学校で多くの子どもたちと出会う中で一番強く感じることは、子どもは自分の気持ちをありのまま認めて欲しいと願っているということです。失敗してつらい、1人で寂しい、勝負に負けて悔しくてたまらないなど、様々な気持ちがいろいろな出来事に対してあります。しかし多くの大人はその気持ちを認めるよりも先に「こうすれば」とアドバイスしたり、「そんなことでどうする、頑張れ」と励ましたりしがちです。アドバイスや励ましを否定するわけではありません。ただ子どもたちはまずそういう気持ちを持つ自分という存在を受け入れて欲しいのです。
たとえ「あいつが憎くてたまらん、殴りたい」という気持ちであっても、大人から「そんなこと思ったらあかん」と否定されればされるほど、子どもはその思いを押し殺すことに苦しみ、わかってもらえなさを募らせるのではないでしょうか。
私は人の気持ちに善悪はないと思っています。気持ちはただあるだけです。その気持ちがあるという事実から目を逸らさずにいたい。もちろん気持ちと行動は別です。「殴りたい」という気持ちをありのまま認めて受け入れることは、「殴る」という行動を受け入れることではありません。また気持ちを受け入れるということは子どもの言いなりになるのとも違います。例えば「このゲーム買って欲しい」という気持ちを認めても、買わないことがあっていいのです。でもその方が手間かもしれませんね。時にはこちらが腹を立てたくなるかもしれません。「だって私は誰にも自分の気持ちを聴いてもらってない。自分もちゃんと誰かに自分の気持ちをわかって欲しい」と。
大人だってわかって欲しい。そのことを自分に認めたら、話をしっかり聴いてもらえる相手や場所に自然と敏感になっていく。子どもの気持ちをありのまま受け入れることが難しかったら、そこか始めていいのではないかと思っています。
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