大阪YWCA会報(大阪版)

2006年12月/2007年1月号(抜粋)


<目 次>

[一面]
◇クリスマスメッセージ「人間の崇高さを信じて」
 雀部 真理(ピースアクション2006 実行委員長)

[二面][三面]
YWの窓
 「辻本清美さんのお話を聞いて」

[四面]
◇ボランティア・社会貢献活動報告「グループパレット25周年」

◇人材育成・研修センター「支えあう社会」を目指す人材育成


クリスマスメッセージ

「人間の崇高さを信じて」

 『きばのあるヒツジ』という絵本があります。広い原っぱで、のんきに暮らすヒツジの群れ。唯一の悩みは、オオカミがときどき群れを襲い、年寄りや子どものヒツジが犠牲になることでした。一頭の年寄りヒツジは、自分の歯が抜けたあとに死んだけものの牙(きば)をはめこみ、オオカミを撃退するようになりました。それを見た若者は、まだ丈夫な歯を石で叩き折り、死んだジャッカルやキツネの牙をアラビアのりでくっつけます。こうしてヒツジの群れは、オオカミに襲われない平和な日々を手に入れました。ただ一つ困ったことが。とがった牙が邪魔してうまく草が食べられないのです。お腹がすいてむしゃくしゃするうちに、草食仲間のシマウマのお尻が実にうまそうに見えてきて・・・。牙をもったヒツジはとうとう肉食獣となり、草原の平和は崩れていくのです。
 この絵本にはひと言の解説もありません。が、「平和」、「安全」、「武装」などについて、深く考えさせてくれます。
 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」 これは、日本国憲法前文の一節です。
 私たちはけものではなく人間です。だから、牙のあるものがないものを食うのでなく、信頼によって互いの安全を守ることができる、その人間としての崇高さを信じてやっていこうと決意した、というのです。それも、自身の安全のためだけではなく、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することををここに確認する」と−。この前文の精神を具体化したのが、「戦力放棄」の憲法第九条です。
 九条改憲への動きが勢いを増しています。軍事力こそが危険を招くことは、沖縄の、そして人類の歴史が証明しているというのに。九条を棄てることは、人間の崇高さを諦めることかもしれないのに。  愚かな大人が牙を磨き、おびただしい数の子ども達が今年も「恐怖と欠乏」のうちにクリスマスを迎えようとしています。私たちは何をなすべきなのでしょうか。
 平和の君であるイエスを迎えるクリスマスに際し、何はともあれ声に出して願ってみましょう。 『世界のこどもたちに平和なクリスマスを』

雀部 真理(ささべまり ピースアクション2006 実行委員長)

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YWの窓
「辻元清美さんのお話を聞いて」

 10月15日(日)、大阪YWCAに衆議院議員の辻元清美さんをお迎えした。国会の動きについて、参加者から事前に募った質問を参考に、お話を進めてもらった。
 骨子は以下の3点。
@北朝鮮の核問題に関しては、浮き足立たずに冷静になり、全ての国の核実験、ミサイル実験への禁止を訴えていく姿勢を打ち出す必要がある。
A辺野古への新基地の移設の裏で、最新鋭の空港と軍港を合せた、普天間基地を上回る大規模な基地建設を進めようとしていること。
B近い将来軍隊を増強するのに必要な軍人(潜在的予備軍)を確保するため、現在の格差社会拡大を肯定していることが推測されること。
なかなか一般メディアを通してだけではわからないことを聞くことができた。国会の中に、このように市民の視点から政治を行っている人がいることが心強い。しかし、50人いる憲法調査会のメンバーの内、憲法改悪に反対しているのは、辻元さんと共産党の方のたった2人だけで、なかなか発言の機会を与えてもらえず、精神的拷問を受けているようだとのこと。本当に民意を反映した議論が進められているのだろうか?
 今、土井たか子さんが日本中で行っている憲法についての講演会には何百人と地域の人々が集まり、また文化人の中にも憲法を守りましょうと、辻元さんに声援を送ってくれる人がいる。まだまだ民意は、日本の唯一の誇りである憲法9条を手放す気はないと信じたい。
 日曜日のにぎやかな大阪YWCAを見て元気をもらったと、明るく話されていた辻元さんが印象的だった。
(会員)

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ボランティア・社会貢献活動報告

グル−プパレット25周年

 1981年に「生活学校」の名称でスタートした「グループパレット」は2006年で25周年を迎えました。それを記念した10月22日のパーティには、これまでかかわってきた多くの人々が集い、生活学校の設立時の思い、現在の「パレット」に寄せる期待を聞くことができました。
 「生活学校」は、養護学校を卒業した後、家にひきこもりがちな障害を持つ若い女性に、楽しみながら自立と仲間作りをできる場を提供しようと始まりました。そしてお母さんにたちに青春をと、娘とはなれて親同士の交流と楽しみをみつけてもらう場もできました。その当時からかかわってきた人にとっては、活動が続いていることは自分たちの青春が続いているようで感動を覚えるという言葉をもらい、メンバーからはパレットに参加することで自分の可能性をのばし、他の場では得られない経験や仲間を作ることができたという話を聞きました。
 「パレット」が多くの人にとってかけがえのない場であることを感じ、ひとりひとりの違いを認めあい、補い合いつつ仲間になり、ともに育つという「パレット」の精神を持って活動を続けていくことの大切さを認識した1日でした。
 これまで活動を支えて下さったたくさんの方々にこの場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。
(グループパレット運営委員会 委員長)

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人材育成・研修センター

「『支えあう社会』を目指す人材育成」

人材育成・研修センターは女性と子どもをエンパワ−し、
『支えあう社会』を創出するための人材育成プログラム(『対人援助者』養成)を展開しています。

 今、自殺者が年間3万人を8年連続で越えるなどの社会現象を見ると、忍耐強く耳を傾け、人を理解し、人に寄り添う援助者が切望されています。『対人援助』には『人との関わり方』が重要です。『対人援助』を学ぶということは、「援助する」技術を身につけることではなく、支え合って生きる生き方を模索することです。大切なのは、ひとりひとりに寄り添い耳を傾ける傾聴、相互のコミュニケーションを通して、他者や社会と関わるチャンネルをつくっていく過程です。
 昨年度から開講した「傾聴力養成講座」の受講生は延べ200人を超えました。ひとりひとりの「存在」に敬意をもって傾聴することの大切さを学んでいます。修了生がこの秋傾聴カフェ「ラベンダ−」をオ−プンしました。ほっと一息、誰かと話したいとき、ぜひ一度お越しください。
(職員)

「ラベンダー」1月の予定  1/12(金)・13(土)・29(月)

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