平和を創るために、紛争転換という方法があります。双方の対立の妥協点を調整するのではなく、対立や矛盾から飛躍して新しい創造的な解決法を探し出すという方法なので、「超越法」 (Transcend Method)とよんでいます。超越法では何が必要かというと、「対話」です。紛争の当事者がどのような目標をもっているかを聞き出します。相手の気持ちを理解すること、すなわち「共感」が大切です。しかし、「共感」は、自分も相手と同じ意見になり感情移入する「同情」ではありません。
紛争転換のための超越法で重視するのは、
A(態度)における「共感」
B(行動)における「非暴力」
C(対立)における「創造性」
の3つですが、特に「共感」について考えてみようと思います。
共感するというのは、相手の都合に耳を傾けることです。自らの意見も大事ですが、まずは、当事者である他者の意見や気持ちを聞きます。そして徐々に、自分も意見や気持ちを開示するのです。ですから、「対話は足し算」です。お互いに足しあっていくのです。こういうことができるようになるためには、トレーニングが必要です。
平和ワー カーとして紛争当事国と対話をし、活躍できる人材を養成することも大切です。「トランセンド」(www.transcend.org)という国際NGOは、各種プログラムを企画・立案・実践・訓練し、外交官や国連職員や国際NGOの人々など、実際に紛争を調停する役割を担う人 々のトレーニングも行っています。日本では、トランセンド研究会
(www.transcendjapan.org)が活動しています。
平和ワーカーの知識と技能は、第3者の紛争に介入して転換するためだけのものではありません。自分自身が、日常の紛争に巻き込まれたり、当事者になったりしたときにも役立つ方法なのです。対立する相手方の目標を理解し、共感することも、訓練によって上達します。共感、非暴力、創造性という3つの能力を身につけるために、紛争転換トレーニングは有効なのです。
この秋、大阪YWCAでは平和のためのワークショップが予定されています。興味のある方はぜひご参加ください。
奥本京子(おくもときょうこ、トランセンド研究会事務局、大阪女学院大学准教授)