大阪YWCA会報(大阪版)

2005年11月号(抜粋)


<目 次>

[一面]
肯定もせず、否定もせずありのままを聴く

[二面][三面]
国際部ってどんなところ?

YWの窓
 「チェルノブイリ原発事故から19年」

男の目
 「居心地のいい場所をお持ちですか?」

[四面]
千里委員会
 「おはなし会」への誘い

専門学校あれこれ
 法律秘書養成講座 「実りの秋」

その他


肯定もせず、否定もせずありのままを聴く

 今もきのうのことのように帽子をかぶった四十すぎの日雇い労働者のことが目にうかんできます。まる顔のおじさんでした。
 その時、私はケースワーカーとして働くことに空しさを覚え、気持ちがふさぎこんでいました。“釜ヶ崎”で働きはじめて、二年目の夏でした。
「えらい元気ないなあ・・・・・」
 心配そうなまなざしをむけてくれました。
「どなんしたんや!!」
 力強く、あたたかい言葉の響きに、ついつい話してしまいました。
「いくらがんばって、労働者の相談にのっても、釜ヶ崎はよくならないし・・・・・・」
「・・・・・・」
「日雇いの仕事は、少なくなるし・・・・・・。次から次へと労働者は病気になっていくし・・・・・」
「・・・・・・・」
「世のなかは、変わらないし・・・・・・」
「・・・・・・・」
労働者は私の話を肯定もせず、否定もせずただうなずいて聴いてくれました。からだ全体が耳になったように、全身でうなづいているような感じでした。
 その姿に、胸のつかえていたものが、とれていきました。私は十分に話しつくしました。
「ねえちゃん、あんまり大きいことを考えんでもいいんやで。あんたは街を歩きながら、『おじちゃん、こんにちは』と声をかけるだけでええんやで。それが、わしらの励みになるんや」
 乾ききった脱脂綿が、勢いよく水分を吸いこむように、私の心は潤い、肩の力がとれていきました。
 ケースワーカーとして働きながら、聴くことの大切さを痛感しています。少しでも本音に近い部分に耳を傾けようと心がけているつもりですが、なかなか思うようにはいきません。
 労働者に聴いてもらってから、二十年以上の月日がすぎました。
 少しでもよき聴き手になれるよう、あの時の労働者の姿を見習って生きたいと願っています。聴いてもらえたという喜びや安心感の豊かな人ほど、人の話しを受けとめていけるのではと思います。
(入佐明美)

 《入佐明美 プロフィール》
 ボランティア・ケースワーカー。'55年鹿児島県に生まれる。姫路赤十字看護専門学校卒業。
 '80年より“釜ヶ崎”でボランティア・ケースワーカーとして働いてきた。著書に『地下足袋の詩』(東方出版)がある。

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国際部ってどんなところ?

あなたは“国際”という言葉から何をイメージしますか?
「“国際”ってなんだか難しそう。」「英語が喋れないとダメでしょう?」などと感じる方も多いはず。
世界団体であるYWCAにおいて、「国際部」が活躍する場面が多くあるのは事実です。
でもでも決して難しいことをしているわけではありません!私たち国際部は…『何でも屋さん』。
世界のみーんなが幸せに暮らせればいいなぁという思いがあれば、それは国際部の活動につながるのです。
そんな国際部の活動の中から、2つのプログラムをご紹介します。


―パレスチナに届け!― Keep Hope Alive

 私たちが、2年前から力を入れて行っているのが「オリーブの木キャンペーン推進プログラム」です。
 2004年度から3年をかけて毎年約10万円の募金を集め、3年間で集まった募金でパレスチナに100本のオリーブの木を植えるのが目標です。
 1年目はキャンペーンの周知を目的としたコンサートを実施し、目標の10万円を集めることができました。
 今年度はすでに5月に関連プログラムを行い、8月にはパレスチナからのゲストを迎えプログラムを行いました。

 8月21日(日)、「パレスチナYWCA青年を囲んで」が開かれました。「ひろしまを考える旅」(日本Y主催)のために来日したパレスチナYWCAの職員のラミさんを迎え、パレスチナの現状などについてお話していただきました。熱心な参加者による質疑応答も含め、充実した会になりました。
 現在パレスチナではイスラエル軍が入植地を広げており、パレスチナ人はその支配下で制限された生活をしています。ラミさんからイスラエル軍によって設けられたチェックポイントで受けた身体検査などの実体験や、パレスチナ人居住地を囲むように建設されている壁についてうかがいました。ニュースや活字を読むだけでは遠い世界であった話が現実味を帯び、その現実は日常的な人権侵害に満ちた、想像以上に厳しいものだとわかりました。ラミさんの「海外で初めて自分が人間だと感じられる」という言葉が強く心に残っています。
 一方で、現状の変化への希望に繋がるお話もありました。オリーブの木キャンペーンの植樹数は年々増加しており、今年も12月からの植樹シーズンに向けて準備が勧められているそうです。当日の出席者にも実際にキャンペーンに参加したことのある方がおられ、確実に運動が広がっていることを感じられました。また、会の最後には「なかなか結果は出ないけれど、こういう活動こそ大事だとわかった」という出席者の感想もありました。日本人に望むこととして、ラミさんは「キャンペーンへの参加はもちろんだが、まずはもっと多くの日本人にパレスチナのことを知って欲しい」と述べられました。キャンペーンのスローガンはKeep Hope Aliveです。パレスチナの方々の希望が一日も早く実現するように、彼らの思いを伝えていきたいと思います。
(国際部委員)

※このキャンペーン推進プログラムは来年度も引き続き行います。みなさまのご協力をよろしくお願いいたします。


―出会い、感じ、行動する!―

 これからの地球の担い手である子どもたちと関わっていくことも国際部の活動の1つです。
 子どもたちと主に関わっているのは、リーダーと呼ばれる大学生や社会人の青年たちです。

 私たちのリーダー会では、ハロハロワールドスクールという小中学生を対象としたプログラムを実施しています。
 「ハロハロ」とは、フィリピン語で「ごちゃまぜ」という意味があり、世界中の人びとと仲良くできたらという思いが込められています。ハロハロワールドスクールでは、年に数回、デイプログラムやお泊りプログラムを実施しています。環境、平和など毎回違うテーマを掲げ、学校の勉強とはまた一味違う、様々なプログラムを作ってきました。世界中で起きている問題を取り上げることもあります。
 毎回一番苦労するのはやはり、難しい内容を子どもたちにどう分かりやすく説明するかということです。そのためにミーティングを重ね、意見を出し合い、たくさんの案の中から楽しく学べるものを探していきます。でも勉強ではなく、楽しく遊ぶことを第一に。
 8月29〜31日のピースキャンプでは、「もうひとつの地球〜ハロハロの国〜」をテーマに、こんな国があったらいいな・こんな国に住みたいという子どもたちの思いを形にしました。新しいリーダーも多く参加し、より一層盛り上がり、大成功でした。
 健康面、安全面など、考えなければいけないこともたくさんあります。パワフルな子どもたちにリーダーの方が振り回されることもあります。疲れを知らない子どもたちにいつも驚かされています。苦労して作り上げたプログラムは、あっという間に終わってしまいます。しかし苦労した分、やり遂げたときの喜びは本当に大きく、プログラム終了後はいつも余韻に浸っています。気が付けば自分たちが子どもたちから色んなことを学んでいるのです。とてもやりがいのある活動だと思います。これからも意味のある、楽しいプログラムをたくさん考え、子どもたちと共に成長していきたいです。
(国際部リーダー)

 他にも、滞日外国人の子どもたちのサポートや開発教育プログラムの企画などもリーダー会では行っています。
 興味のある方はいつでもご参加ください!

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YWの窓
「チェルノブイリ原発事故から19年」

 チェルノブイリ原発事故から19年が経過、その間原発、核、チェルノブイリに関する事に出来るだけ関心を持ち、講演会、報告会、写真展等に足を運び、関連文章に目を止めるように心がけて来ました。かつて広島の原爆写真を見た時、溢れ出る涙で目がかすみました。10年前、初めてのチェルノブイリ写真展は身も心も傷ついた少女達のあのあどけないつぶらな瞳が写真を見る者の心と体を硬直させました。息のつまる思いと胸の痛みは今も残っています。今回の日本キリスト教団大阪教区核問題特別委員会のチェルノブイリスタディツアー報告会では、ミンスクチェチェルスク、ゴメリの病院、サナトリウム、児童養護施設、教会、強制移住の村の現状をビデオ、写真等で詳細に知ることが出来ました。
 この報告会で、私はやはり子ども達の健康障害の実情に言葉を失くしました。報告者の一人に医師がおられ、医学的な面からも詳しく学べました。幼児達に白血病、悪性脳腫瘍等に加え、子宮ガンなどが発症している事には驚きの極でした。強制移住のあったナオファビッチ村に独居の女性が危険を承知で長年住みなれた所をを離れたくないという心境も分かります。子どもや高齢者の犠牲はどんな時も「どうして?」と叫びたくなります。
 支援活動は特に日本とドイツのNPOの働きが大きいとの事、感謝を捧げたい気持ちです。
(会員)

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男の目
「居心地のいい場所をお持ちですか?」

 最近、「畑いじり」に興味を持つようになりました。その思いは日に日に強くなってきているような気がします。週末が近づいてくるものなら、今度の休みの日には、「どこの土を耕そうか」とか、「そろそろあの種を蒔かなくては」といったことが脳裏に浮かび、仕事もままならない状態です。
 そんななか最近、『園芸福祉』という言葉がわたしの周りでよく聞かれるようになりました。土の持つ温もりに触れ、自然との調和を五感で感じながら、心を癒し豊かな生活を過ごしていこうというものだそうです。そしてそこには人との交流がおこり、地域活動が生まれてくるのだと言います。
 わたしは今、仲間と「なばり赤目・梅の会」で活動を楽しんでいます。休耕田対策として梅木を植え、梅実を生産していたのが、年を重ね生産者の高齢化で維持することが困難となったことから、埋もれてしまう梅林資源を守り活用しようと、数年前から会員を募り梅林を解放しているのがこの会です。そこに集う会員は異業種異年齢と様々で、自分には持ち合わせていない魅力を多く持つ素敵な人たちばかりです。会員それぞれ梅林にかける思いは少しずつ違いますが、それを無理にひとつにまとめるのではなく、緩やかな拘束のなかで活動できることは、わたしにとってすごく居心地のいいところだと感じています。

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千里委員会
「おはなし会」への誘い

 子ども図書室では、子ども館の子どもたちに本の貸し出しをするほか、おはなしの時間にはストーリーテリングや絵本の読み聞かせをしています。私たちの語りかける生の声を聞き、子どもたちは主人公になりきって楽しみます。こうしてくり返しておはなしを聞くうちに、この子どもたちが、人を愛し、平和を愛する人になることを信じております。子どもたちに良い絵本を、良いおはなしを届けるために、私たちは毎月2回集まって勉強をしています。
 年3回(5月、9月、クリスマス)対象を大人に代えて、シャロン千里2階ホールにて「大人のためのおはなし会」を開催しています。近畿一円の「語り」に携わる方々やおはなしを聞くのが大好きな大人たちが聞きに来てくださいます。
 今、世間でも、語りや読み聞かせが見直され、皆様もその大切さを十分ご存知のことと思います。お忙しい日々をお過ごしの皆様こそ、少し非日常に立ち戻って、2階ホールの扉を開けてみてください。心の深い所に語りかけてくれるものに出会えるかもしれません。また生き方の良いヒントが得られるかもしれません。そうでなくても、何回もくり返し聞くうちに、ちょっぴり生きる力が得られることは、確かに申し上げられることです。ご来場をお待ちしています。 
(こども図書室)

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専門学校あれこれ

法律秘書養成講座
「実りの秋」

 藁と糞にまみれての牛の世話、鮭のお腹を裂き続けたイクラの加工工場、民宿の下働きetc.・・・
 これらが私の、大学卒業後の仕事でした。まだ世間を知らない内に、遊びの延長で日本一周を目指し出発したものの、北海道の魅力にはまりどっぷりと浸かってしまったのです。その後、バイクで旅をしながら各地の様々な飲食店で働いているうちに30歳になっていました。これを機に定職に就こうと決めたのですが、飲食店従業員でしか経験を活かす事ができず、正社員とはいえ過酷な労働条件の下、もう若くはないと思い知る毎日でした。
 そんな時、大阪YWCA専門学校に出会い、法律秘書養成講座というものの存在を知りました。そこでの面白い講義を受けるにつけ、忘れていた大学入学当時の夢がよみがえり、また、多少の人生経験をした今だから沸いてくる新たな興味もどんどんと膨らんでいきました。そして次第に法律事務所での勤務を現実的に考えるようになり、去年の夏から求職活動に入りました。
 何もかもが新鮮に感じられた法律事務所の面接も、不採用が続くにつれて焦りや不安が大きくなり、精神的に追われながらの挑戦となっていきました。当時は全人格を否定されたような気分にもなり、随分落ち込んだものです。しかしその中で、私の生き方を認めて頂き、それを踏まえた上でのアピール法など、具体的なアドバイスを下さる有難い先生達に勇気を貰ったおかげで、この8月よりようや・・・く、私にとって大変心地よい事務所の一員になることができました。
 今は、挫折の連続だった人生の中でこんなにも希望が叶い、理想の生活への道が開けたことを、夢ではないかと真剣に疑う日々を送っています。こんな機会を与えて下さった皆様に感謝しつつ、もうしばらくは夢見心地の余韻に浸ろうかと思う32歳の実りの秋です。
('04年9月入門コース修了 第12期生)

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      担当:木下