大阪YWCA会報(大阪版)

2005年10月号(抜粋)


<目 次>

[一面]
子どもたちに核のゴミを残さないために

[二面][三面]
◇2005年“夏”日韓青少年友情キャンプ〜韓国から青少年を迎えて〜

YWの窓
 「私の出会ったオーストラリア」

男の目
 「いつまでも前向きに」

[四面]
国際部委員会
 「コモン・コンサーンを読む会」

専門学校あれこれ
 日本語コース「中高生のための日本語クラス」開講

その他


子どもたちに核のゴミを残さないために

 原発で最大の問題は、生命を危険にさらす死の灰(使用済燃料などの放射性物質)を大量に産み出すことです。各国はその死の灰をどう処分したらいいかわからないまま、多くの原発を作ってしまいました。事故が起これば世界は死の灰で広く長期間にわたって汚染され、多くの人々にガンを発症させたり死なせることは、チェルノブイリ原発事故で見たとおりです。
 だから、原発は大都市近くに決して建設されません。過疎地で作られた電気は地元を素通りし、遠い大都市に送られます。地元住民には危険だけが押し付けられます。私たちが無関心でいた間に、不公正な状況が国策として既成事実になってしまいました。
 大量に産み出された死の灰は、何万、何十万年にわたる未来の子孫に危険を押し付けます。しかし、使用済燃料に少量含まれているプルトニウムを、将来、高速増殖炉の燃料に使うという理由のもとに放置されてきました。ところが、高速増殖炉は危険が大きく経済的に成り立たない上、核兵器製造に直結するため、世界は開発を中止しました。日本も、1995年「もんじゅ」が事故を起こし、10年間停まったままです。それでも政府は、今年まとめた「原子力政策大綱(案)」で高速増殖炉開発の継続を決め、「もんじゅ」の運転再開を目指しています。
 「もんじゅ」の安全審査には重大な欠陥があり、福井県住民は、建設を許可した国を裁判で訴えました。高裁は住民の訴えを認めましたが、今年5月、最高裁は住民の訴えを退けました。国に都合の悪い事実をことごとく無視し、ありもしない“事実”を作り上げた上、国に独裁的な権限を認める実に不当な判決でした。高速増殖炉開発を止めるとプルトニウムが要らなくなり、使用済燃料は単なる核のゴミに過ぎなくなります。危険なゴミ捨て場を引き受けるところはどこにもないでしょう。そうなると原発は動かせなくなります。そこで最高裁は、三権分立の原則を忘れ、行政の失敗を救うため強引な判決を下したのです。それは、原子力政策の矛盾をますます深みへ追い込むでしょう。
 原発はやめなければなりません。そして、代わりのエネルギ−を心配する以前に、エネルギ−多消費による環境悪化を心配すべきです。
(小林圭二)

 《小林圭二 プロフィール》
 '39年大連市生まれ。京都大学工学部原子核工学科卒、京都大学原子炉実験所助手、同講師をへて'03年定年退職。
 原子力発電の実用化に夢を抱き原子力を専攻、原子力開発研究者の道を歩み始めた。やがて、原子力界の矛盾に気づき、70年代前半、四国電力伊方原子力発電所1号建設に反対する住民訴訟の支援を契機に原発反対へと舵を切る。
 【主な著書】
 「高速増殖炉もんじゅ 巨大核技術の夢と現実」七つ森書館
 「原発の安全上欠陥」(共著)第三書館 他多数

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YWの窓
「私の出会ったオーストラリア」

 4月下旬から一ヶ月ほどオーストラリアへ行き、2軒のお宅にホームステイをした。
 どちらも日本人の妻といわゆる外国人の夫というカップル。何に驚いたって、とにかく夫がよく働く、家の中で。1軒目のお宅は夫婦とも在宅で仕事をしているが、朝、子どもを起こし、朝食とお弁当を作り、幼稚園まで送迎するのは夫。洗濯、買い物、夕飯の用意も夫。もう1軒のお宅は妻が専業主婦。仕事から帰った夫は、休むことなくそのまま台所へ向かい、食器を片付け掃除をする。そして朝食は妻のリクエストを聞きながら作り、妻が寛いでいる居間まで運ぶ。あまりに働く夫とそれを当たり前に受け止めている妻の姿に「いつか夫が怒り出すのでは…」と私の方が勝手にどきどきしてしまった。そして日本人の妻が羨ましく、嫉妬さえ感じた私!自分がまだまだジェンダーに縛られていることを痛感する日々だった。
 どちらの夫も、家事を自然に楽しんでやっていた。「こういう時代だから…」「やらなきゃいけないから…」ではなく。そんな姿を目の当たりにした日本人男性がひとこと「結婚生活を続けていくには、こういうこと(夫も家事をする)が大切なんだって思いましたよ」。
 たくさんの言葉を尽くして家事分担を叫ぶよりも、人の生き様に出会って感じることが、人を変化させるのかもしれないですね。
(会員)

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男の目
「いつまでも前向きに」

 スーパー銭湯というものがあります。比較的低料金で入れる健康ランドのような大型の入浴設備で、露天風呂やすごい勢いのジェットバスや壷型の浴槽などがあり、銭湯好きの僕にとってはパラダイスです。そのスーパー銭湯で友人と将来について語り合ったりするのはとてもいい時間です。
 近頃、若者が仕事や社会に希望を持てない、などといわれています。実際にひきこもりやニートなどの問題も深刻です。少子化が進む中、日本経済にも根深い影響を与え始めています。やるべきことがわからず世間、社会の物質主義で排他的な風潮に従順な若者ほど希望が持てない。それは、真面目過ぎるほど真面目であるということではないでしょうか。
 今年4月に僕は大阪YWCA専門学校の国際関係開発学科に入学しました。国内外の問題について勉強したり、また問題に取り組む人たちに出会うことで、自分自身の問題に立ち返ることに役立ちました。さらに、身近な人や同年代の友人の問題や苦悩を解決しようというポジティブな姿勢を持てるようになりました。それは大きな収穫でした。
 僕は、今年で25歳になりますが、自分がヤングとは言えない年になっても前向きに若者と接していきたいと思います。

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国際部委員会
コモン・コンサーンを読む会

 「コモン・コンサーン」は世界YWCA(本部ジュネーブ)から年4回発行されている機関紙の名称です。コモン・コンサーンとは “私たちみんなの共通の問題”という意味です。
 アフリカで、ヨーロッパで、アジアで年々増え続けているエイズ。紛争のたびに新たに生まれる難民。貧困、虐待、差別など。犠牲になるのはいつも女性と子ども達です。これらの難問に正面から向き合い、変革しようと挑戦している世界各地のYWCAの姿をコモン・コンサーンは伝えています。一人ひとりは弱い被害者であっても、みんなが力を集めて声を挙げれば解決の糸口が見えてくるはず―と、訴えています。
 たとえば、バングラデシュからは力強い報告が寄せられています。ラルカーン地区に住む、家族のために1キロの米さえ買うことができなかったある女性が、YWCAから50ドルの融資を受けて自分のビジネスを始めることができました。乳牛1頭を手に入れ、そのミルクを市場で売り、やがてヤギ、カモなどの飼育で収入を増やし、5年後には毎月40キロの米を買うことができるまでになりました。
 彼女は、チッタゴンYWCAが十数年前から取り組んでいるマイクロクレジット・プロジェクトに参加した一人です。YWCAからの融資をきっかけにして経済的自立をはかるのです。プロジェクトのスーパーバイザーの指導は、ローンの返済計画だけでなく健康、栄養、識字など生活全般に及びます。それはまさに持続可能な自立プログラムであり、参加者の生き方を確実に変えることができます。そこから自分たちを取り巻く状況を変革する力が生まれると、YWCAの担当者は断言します。そして、すでに1万人以上の女性がこのプロジェクトに加わり成果をあげていると報告しています。
 「読む会」では毎号の記事の中からテーマを選び、日本語に翻訳されたテキストをもとに話し合います。感想や意見の交換、身近な現場からの情報の提供や参考になる図書の紹介など、自由な雰囲気です。私たちに何ができるか、何をしなければならないかを考えさせられるひとときでもあります。
(会員)

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専門学校あれこれ

日本語コース
「中高生のための日本語クラス」開講

 ここ数年、様々な理由で、日本の小・中・高校で学ぶ外国籍の子どもが増えている。彼らの多くは日本語能力が不十分なために日本の学校に入学できない、また入っても授業についていくことができない、といった問題を抱えている。
 日本語コースではこの夏、通常の夏期集中コースと並行して、「中高生のための日本語クラス」を初めて開講した。
 学生は中国の女性4名、ロシアとスペインの男性1名ずつ計6名の初級レベルの学生が集まった。両親の仕事のため日本へ家族で移住したり、両親のどちらかが日本人と再婚したり、という背景をもつ。
 午前中は、中高生同士が友達になるきっかけとなるような会話や自分自身のことをプレゼンテーションするといった会話の練習を中心に。午後はインターネットで自分の国について調べ日本語で発表したり、天満市場へ出かけ、どの国から輸入された食材かを市場のおじさんに質問してみたりと、盛りだくさんだ。また課外活動として「私のしごと館」(京都府精華・西木津地区)にも行った。そこではどんな仕事があるのか、どんな仕事をしてみたいか、など自分の将来像を描く上での参考になるような職業擬似体験をした。
 彼らの多くが今後、希望するしないにかかわらず日本の学校で学び、日本社会で生きていかなければならない。大阪YWCAが、そのために必要な日本語を学ぶ場であることはもちろん、「将来のなりたい自分」を描くことのできる場であれば、と願っている。
 秋からは、初級レベルのティーンエイジャーを対象とした6ヶ月コースを開講する予定だ。

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