大阪YWCAにおけるDVへのホリスティックな取り組みとは?
ホリスティックという言葉をご存知ですか。最近、この言葉は国際的な人権・教育・福祉・医療などの分野でキーワードのひとつとなっています。
日本語では「総合的・包括的・全体的」と訳されています。ホリスティックな考え方とは「部分をそれぞれに大切にしながら、なおかつそれをつながりや関わり、バランス、相互作用の中で総合的にとらえる」ことです。現代社会はものごとを専門分化し、単一化してつながりや関わりを分断していく傾向を強くもっているので、「ホリスティック」ということがますます重要になっています。
さてドメスティック・バイオレンス(DVすなわち恋人や配偶者からの暴力)にホリスティックに取り組むとはどういうことでしょうか。この問題にかかわる人々として被害者(大半は女性)、加害者(大半は男性)、子ども、親族や友人、職場や近所の人々、援助者(医療・心理・子どもの教師なども)、など多岐にわたる人々をまず視野にいれます。こう考えると誰もがこの問題につながっている可能性があります。その中で最優先課題は被害女性への緊急支援です。被害者へのホリスティックな支援は、まず暴力からの避難と安全確保。そして、心やからだに受けたダメージからの回復。次にひとりの人間として精神的に経済的に社会的にエンパワーして自立生活するまでの多様で長期的なサポートが必要です。加害者への取組みでは、暴力についての自覚、処罰、謝罪、脱暴力への学習などが必要になるでしょう。
大阪YWCA女性エンパワメント部がDVをホリスティックに取り組むようになった経緯をみてみます。1999年より「女性への暴力被害者のためのサポーター養成事業」(文部省委嘱)を開始。年々取り組みを重ねて、現在は@女性被害者のための講座(’02〜)A男性加害者のための脱暴力事業(大阪府委託)(’02〜)B被害者の援助者研修(’99〜)CDVの子ども支援者養成(’04〜)など、公的助成金等を頂いて実施するに至っています。
ホリスティックな取組みでは被害者・加害者・子ども・周辺の人々・援助者のそれぞれに関わっている人間が互いにつながり、かかわりつつ問題解決をめざす必要があります。エンパワメント部ではこうした関係が効果的に継続しています。このようにホリスティックな取り組みが行われている団体はまだ日本では極めてめずらしく、大阪YWCAの取り組みは今後もますます注目されていくことでしょう。
(ホリスティック教育実践研究所所長 金香百合)
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