大阪YWCA会報(大阪版)

2004年6月号(抜粋)


<目 次>

[一面]
むらさきつゆくさ 10周年に寄せて
 中山 高昌

[二面][三面]
千住真理子 イースターコンサート

YWの窓
 見過ごしてはいけない

男の目
 甘い追憶

[四面]
◇4・5月幹部委員会報告

その他



むらさきつゆくさ 10周年に寄せて

 視覚障害者のためのいけばな講座「ムラサキツユクサの会」は今年で十周年を迎えることになった。「今年で十年なんですよ」と人に教えられて初めて「そうなんだ」と思ったほど自分にとってこの講座は日常になっている。
 しかしよく考えてみると、この講座がずっと十年も続いているということは本当に驚くべきことのように思える。われわれ花の教え手はもちろんだが、お花を習いたい視覚障害者の方がいらっしゃらないといけないし、それを手助けしてくださるガイドヘルプの方もいらっしゃらないといけない、そしてYWCAの方に事務的なこともやっていただかなくてはいけない。本当にいろいろな要素がずっと揃っていたからこそ今まで続けてこられた訳だ。
 思い起こすと、この講座の話があったときは私自身「できるんだったら・・・」いった程度で、習いたい人が集まるかということが疑問だった。それが、メンバーが揃う、ヘルプの方もいらっしゃる、というようにとんとん拍子で事が運び、ついには始めることができた。
 今ではよくあんなに細かく考えたと思うが、始めるにあたって、寸法の取り方、角度の取り方、構成の仕方などのいけばなの要素をいかにしたら言葉で伝えられるかということを、今もいらっしゃるメンバーの方と細かく話し合った。そのとき、花を傾けるのは時計の時刻の方向と角度で言えばわかる、というようなことを逆に教えてもらったりもした。
 いける側も教える側も当初はお互い手探りで、二時間みっちりとかかることが多かった。しかし今は、私がいけた見本の花を講座のはじめに触ってもらった後、早い人で三十分、遅い人でも一時間ぐらいで皆さんいけ上げてしまう。しかもアドバイスも、時計の時刻の方向なんてどこかに行って、「ちょっと長いですよ」とか「もう少し傾けて」とか、健常者に教えるのと変わらない。花を普通に教え、普通に習う、そんな風景がずっと続いてきている。
 私にとって十年続けられた原動力は、ずっと習い続けてくださるメンバーの皆さんがいたからで、多分そのことは他の関係者の方も同じなのではないだろうか。

(中山高昌/未生流中山文甫会副会長)

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千住真理子 イースターコンサート

入場者数793名

 春光うららかな4月17日(土)、千住真理子さんのヴァイオリンコンサートがいずみホールで催されました。300年の眠りから覚めた幻の名器「ストラディバリウス/デュランティ」で千住真理子さんが弾かれる音色が生で聴けると楽しみでした。「デュランティ」とは、フランスの貴族デュランティ家の名字だそうです。想像していた通り、素晴らしいの一言!。いずみホールを包み込む深みのある音色、華奢な身体から涌き出るパワーとエネルギー、繊細なピアニッシモの美しさに聴衆一同陶酔した事でした。
 千住真理子さんはヴァイオリニストとして、また女性としての生き方に人間的な魅力を感じさせて下さいました。聴衆のアンケートからも素晴らしい演奏に感動された様子が伺えました。感激のあまり、涙がとまらなかったと感想を下さった方もありました。
 このコンサートの実行委員会を立ち上げたのは昨年4月でした。1年かけての長丁場。心をひとつにして励ましあいながら準備をしてまいりました。幸い今回は外部の方の反響も大きく、チケットも早くから完売となりました。会員の皆様には温かいご支援,ご協力をいただき、ありがとうございました。
 コンサートが盛況となりましたのも、ひとえに千住真理子さんがお忙しいスケジュールのなか、こころよく出演をお引き受け下さったからで、深く感謝申しあげます。

(ビッグイベント実行委員会 委員長)

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YWの窓
見過ごしてはいけない

 「わかりません」と16回。何で訴えられるのか、何で参拝がいけないのか、何で外国から非難されるのか、何で憲法違反なのか…。こちらも何でこんなお寒い頭の方が首相なのか、わかりません!
 小泉靖国参拝違憲アジア訴訟の福岡地裁判決で、4月7日「首相の参拝は違憲である(憲法20条)」との判断が示された。
 今の小泉首相は、行政の最高責任者として最大限の憲法遵守義務のある身でありながら憲法違反を堂々とやり、司法の判決を無視して「参拝はやめません」と断言した。「二度と戦争を起こさないために」と言いつつ、自衛隊を戦場同然のイラクに派遣し、戦争参加への一歩を踏み出した。
 靖国がなぜ30年以上も前から度々問題にされ訴えられるのか。靖国(War Shrine)が戦争推進の本元であったのは周知のこと。だが仏教徒もキリスト教徒も全てが天皇に命を奉げた英霊として合祀されており、ましてや、植民地化されたアジアの人たちには、合祀は民族的屈辱なのである。靖国問題は、物心両面にわたる日本の戦後処理の不徹底を表す一方で、憲法の信教の自由と国旗国歌の強制に見られる「内心の自由」の侵害の象徴ではないだろうか。
 この訴訟にYの会員も手弁当で原告に加わっている。全国各地の訴訟に目を向け、くり返される憲法違反に慣らされて気づいたときは憲法改悪に…とならないように。
 私たちには皆平等に「一票」がある。これが日本や世界の行方を決める力を持っている。

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男の目
甘い追憶

 「代打長崎」。この言葉には特別な思いがある。1985年の日本シリーズ、不利と予想されていた阪神が、3勝2敗の王手をかけて広岡西武と戦った第6戦、両軍決め手を欠いた重苦しい中盤に、阪神は2死満塁の絶好機を迎える。しかし打順は下位打線。この絶好機を逃すなら試合の流れは一気に相手に傾きそうなこの時、「代打長崎」が告げられた。前年大洋から移籍した長崎は生涯最後となるこの打席で、ファンの期待と祈りに代打満塁本塁打を放って応えた。この1打で阪神は優勝し、そして長崎の名は真弓、岡田、バース、掛布と共に長く、深くファンの胸に刻み込まれる事になった。それにしてもと僕は思う。この年、長崎は心の底から満足し納得して引退を決めたに違いないと。
 この年、虎ファン達は幸せだった。予想をくつがえしての完璧な勝利に喜び、長く待たされた分さらに大いに盛り上がったものだった。
 今年、岡田阪神の調子はいまいちだ。しかし我々にはこんなにも甘い追憶があるのです。
 だからあと十年は待つことが出来るのです。

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