クリスマスメッセージ
多くのクリスマスカードや絵画で描かれるマリアとイエスはたいてい、真っ白な肌をした母と子として描かれています。西欧の名画は美しく、評価する一方、そのイメージに疑問を感じざるを得ません。その母子像の肌の色から来る疑問です。なぜ、マリアとイエスはいつも白人なのでしょうか?それは欧米のイメージが中心で、偏っているとも言えるのです。そもそも、マリアとイエスは今でいうパレスチナやイスラエルの出身でしたので、肌の色は白くはなかったはずです。勿論、肌の色を議論する事はあまり意味がないことかもしれません。もっと大事な事は、マリアとイエスが私たちにとってどういう意味を持つのかを考えなおす事なのです。
イエス・キリストの誕生は極めて貧しい環境で起きました。宿では拒否され、仕方なく馬小屋で出産した若いマリアは未婚の母で、父親ヨセフは大工でした。つまりイエスは庶民の子と生まれたのです。最初にイエスの誕生を祝った羊飼いは現代でたとえるならば、日雇い労働者と言るでしょう。不安定な立場にいる主人公ばかりです。社会の価値観から見れば、神の子、主イエスキリストの降誕にふさわしい環境や状況ではないと言えるかもしれません。しかし、そのパラドックスにこそ意味があります。弱い、貧しい、不安定な人のためにこそ生まれたイエス。絶望の内にいる者に希望を、戦いのある所に平和を示すイエス。イエスの誕生を通して示して下さった神の愛と希望は、困難や絶望に直面する時、私たちの励みにもなります。恐れるな、あなたは一人ではない。神が解放への道を示して下さる。そしていつもそばに居てくださる。これがクリスマスのメッセージです。
YWCAの様々な活動は神の愛と希望の表現とも言えるでしょう。「弱い」「貧しい」人々と共に立ち、人権、平和、正義をもたらす道具や器となる−これこそがクリスマスの意味の実践です。
9・11事件以来、私の母国であるアメリカは特にアラブ系の人に対する偏見が増し、排他的な政策が目立ちます。テロ防止という名で暴力が正当化され続けています。イエスが示した道を見極め、真の平和を創るためには何が必要なのでしょうか?今年のクリスマスはアジアや中東の顔をしたイエスとマリアを眺めながらそう問いかけたいです。
マーサ・メンセンディーク(宣教師・京都YWCA会員)
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