グリーフケアってなに?
十数年間暮らしたカリフォルニアから帰国して、あっという間に1年9ヶ月が経ちました。数年前に突然日本語教師から方向転換し、以前から興味のあった心理学を学び始め、そこで初めて「グリーフケア」という言葉に出逢いました。「グリーフ」とは「喪失の悲嘆」という意味です。
「喪失」は死別だけでなく離婚や失業等、本人が失ったと感じるものは全て含まれます。アメリカでは大切なものや人を失ったときの悲しみからの回復を手助けするカウンセラーをグリーフカウンセラーと呼び、そのほとんどはエイズや癌等で余命を宣告された患者や、病気や事故などで愛する人を亡くした遺族の心のケアをしています。
当時日本では聞いたことのなかった「グリーフカウンセラー」になりたいと思ったのはなぜだったのか、今でもよくわかりません。幸運にも地元で最も充実した施設とサービスを提供するサンディエゴホスピスでグリーフカウンセラーのインターンとして働くことができ、貴重な経験を積むことができました。日本に戻った時、「グリーフケア」という言葉をあちらこちらで聞きながらも、実際に本当に必要としている方々にはほとんどケアが届いていない現状を知り胸が痛む思いでした。
ホスピスでは遺族のためのサポートグループを提供しているところもありましたが、ホスピスのように大きな母体を持たない個々の遺族の方は同じような体験をした人達が作った自助会に祈るような思いで足を運び悲しみの体験を分かち合われていました。そこに専門のグリーフカウンセラーの姿がなかったことに驚きました。
しかし、「グリーフケア」は専門家だけがするケアではありません。昔は悲しい出来事があった時、家族がお互いに支え合い癒されてきました。核家族化した現代では、家族だけでなく友人や専門家などの支えも必要となってきました。でも、実際には「グリーフ」についての理解のなさから、慰めのつもりでかけられた言葉や態度で傷ついている遺族も多くいらっしゃいます。そのような残念な行き違いは正しい知識を持っていれば避けられることばかりです。
これからもできるだけ多くの方に「グリーフとそのケア」について知っていただけるよう活動を続けていきたいと思っています。
グリーフカウンセラー、グリーフケア学習会講師
米虫圭子
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