基本法見直しへの経緯
02年11月26日、遠山文部科学相は、教育基本法の見直しを中央教育審議会に諮問しました。
見直しが公式論議となるのは、制定以来、初めてです。諮問は「教育振興基本計画の策定」と
「新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方」の2点。しかし、もともと、
教育基本法の改訂を求めたのは、「教育改革国民会議」という森善朗前首相の単なる
私的な諮問機関なのです。この団体が一昨年12月、(1)新しい時代の日本人の育成
(2)伝統、文化の尊重と国家などの視点(3)基本計画の策定−−の点から見直しが
必要だと中教審の諮問を表明していたのです。教育の諸問題を国家意識の高揚によって
解決しようという発想が中心にはあるようです。文科省は、内閣が変わり与党内にも
慎重論が根強いことなどから先送りしてきたけれど、国民会議の提言からすでに1年近くが
たったからと今回の諮問に踏み切ったのです。
法が活かされないままの改訂
現在全ての法がきちんと守られて活かされてきたとはいえません。例えば、第10条は
教育行政への不当な支配を禁じていますが、国際人としてのセンスを養うという名目での
日の丸の掲揚や君が代の斉唱が強制されています。
ゆとり教育から学力重視へという文科省の急激な路線変更の指示が下り、右往左往
させられているのは現場の教員や子どもたちです。また、大阪府では、教員への勤務評定が
なされようとしていると聞いています。教員が評価ばかり気にかけて行動する上意下達の
官僚にさせられてしまうとしたら、子どもたちの自分らしい生き方を支援できないと思います。
今回の基本法の改訂では、教育の目的や理念で「愛国心」をうたい、その遂行を、
第10条での国や地方公共団体の「責務」として規定しようとしています。
「愛国心」が自然にわきあがるのを待つのではなく、「教育振興基本計画」策定によって、
詳細に目標設定され、実現確実な計画及び予算をのもとで子どもたちに愛国心を持たせるとしたら
どうでしょう。子どもたちの内心の自由はますます脅かされるのではないでしょうか。
基本法の崇高な精神を活かして
教育基本法は、占領軍の押しつけなどではなく日本側から自発的に発意され、
田中耕太郎文相とそのスタッフたち、それに教育刷新委員会の委員たちによって
立案、制定されていったものです。「教育基本法は日本人がつくった」という証言は、
教育基本法制定に携わった人々に共通するところです。10条に関しては、議論を重ね、
5回もの修正過程を経て現行のものに定まりました。今一度、基本法制定の崇高な精神
を私たちは学び、活かしていかなければなりません。
現在、教育現場では、教育基本法の精神は風前の灯火。基本法改訂に反対するだけでなく、
その精神を活かす具体的な活動が必要です。小さな子どもがうつ病になってとじこもる
というような日本の状況は相当深刻な社会問題です。もっともっと大切な問題として、
法での解決だけでなく一人の人間として取り組んでいきたいものです。
(文責 編集委員会)
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国際関係開発学科(DEGRA)の中でも、とりわけユニークな講座は対人援助の基本を学ぶ「人間関係・問題解決」と、学生がプログラム立案から実施を行う「企画」。ご自身がDEGRAの出身である講師・李福美さんに、講座への思いを語っていただきました。
* * *
私がDEGRAと出会ったのは97年。受講していた時は、いろいろしんどいこともあったが、学ぶことが楽しくてうれしくて、たまらなかった。
今年の学生(8期生)の面々は個性的であった。人間関係の授業の中では、様々な葛藤も起きた。学生たちはそれを避けずにがんばり、そんな前期の学びをくぐったからこそ、後期のすばらしい企画が実現したのだと思う。すみずみまで気配りの行き届いた、心のこもった企画で、プログラムも盛りだくさん。参加者の満足度も高かった。
この講座を受け持つことで、講師も鍛えられる。つい「ええかっこ」しそうになる自分と葛藤し、人間関係の講師なんて無理やと思うことも多々あった。それでも、私がYWに出会ってエンパワメントされたその経験を、色々な人と分かち合いたいと願って学生たちと向き合っている。弱虫になる私を支え、授業以外の所でも学生の学びを支えていた担任の存在も大きい。
YWで学んだことが私の生きる糧になっているようにDEGRAのみなさんの糧にきっとなっていると信じている。
(講師 李福美)
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